パンツの話は、一回で終わるつもりだったのに、前置きで盛り上がってしまった。
 漫画家の伊藤理佐さんも、新聞の連載で、パンツの話で盛り上がっていた(?)ことがあったし、良いだろう。
 小学生の低学年頃に、スカートめくりなんてこともされましたね。誰でも一度はされたと思う。あれは女の子がびっくりして「キャ!」とかいう反応を、男の子が喜んでいただけだろう。女の子は決して喜んでいなかった。多分。少なくとも私は。本気で腹を立てていたので「ちょっと、やめえよ!」と引かれるくらいにらんでいた。でもそれさえも楽しまれていたのだろうか。好きな男の子が近くにいたら、パンツを見られるではないか。そんなこと絶対にいやなのだ。そう、私が好きになるような男の子は、大抵スカートめくりなんてできない、しない子ばかりだったのだ。やんちゃな子たちが手当り次第にスカートをめくり、好きであろう女の子を執拗に追いかけているのは正直、情けない姿であった。
 ある日、私は当時「シミーズ」というスリップのような物を買ってもらった。胸元には漫画『キャンディキャンディ』の絵が描かれてあり、とても気に入った。これで、スカートをめくられても、パンツは見えない。勝ち誇った気になっていた私は、下校時「ホラ、これでスカートをめくられてもパンツは見えない」とそのまま言葉に出し、がばーとワンピースをめくり、キャンディキャンディの絵まで見せた。ほ〜ら大丈夫ざますわよ〜おほほほほ!!とばかりに男の子の前でワンピースを胸までたくし上げる私はどう見ても大丈夫ではない。よりによって下校中の公道である。変態だ。彼らも良い迷惑だっただろう。
 ああまた余計な話で盛り上がってしまった。
 残り少ない行で大学生の頃の話をしたい。可愛いパンツを……まあ週に半分以上はいていた頃だろうか。真っ白でウエストの部分がびっくりするほど幅広な、ゆったりパンツは週に2回もまわってきただろうかという頻度であったはずだ。
 そんな中で起こった出来事である。
 電車に乗って、大学のある最寄りの駅で降りた。その時。
 逆方向の電車が特急だかで、すごい勢いで駆け抜けた。当時、私の降りる駅は各駅停車する電車しか止まらなかったのだ。逆方向をすごい速さで通り過ぎた電車は、私の降りた電車の下に相当な勢いの風を通し、さらにどんぴしゃのタイミングで、私はその風が下から吹き上げてきた瞬間に、電車とホームの隙間にいたのである。マリリンモンローばりの「わ〜お」どころではない。降りる瞬間にいきなり猛烈な風が吹き上げ、私の膝丈くらいのスカートは見事にガバっとめくれた。ガバッとめくれてすぐに戻れば良かったのに、戻らなかった。後ろ全開。裾はおそらく背中に達していた。前を向いたまま歩きながらスカートの裾を戻す私は、側からは、冷静に対処したように見えただろうか。もちろん冷静なんかじゃない。恥ずかしくて後ろを向けなかっただけだ。後ろの人たちに、そう、滅多にはかない白いゆったりパンツを全開で見せてしまったのだから。スカート全開だなんてこんなに恥ずかしいことはないのに、もうよりによって何でこのパンツの時に!!と内心、わーわー叫んで頭を抱えていた。後ろの人たちの反応なんか絶対に想像したくない。