さて、その後、水族館の通路に展示されていた、各作品を間近で見ることができた。各作品を「ストランドビースト(砂浜の生き物)」と呼び、それはオランダの海岸にて生息していることになっているとか。それらにペットボトルがついていたのも印象的だ。ペットボトルには空気を入れて、それを動力にするらしい。
 奥には決められた時間ごとに、大きな作品を動かすところを見る場所がある。近くの休憩所でちょっとした飲食物を頼むために列に並ぶ。真後ろに並んだ母娘にまたストレスがたまる。娘の小さな要求に対して、母親はキーキーした声でいちいち反論する。今はやめてよ、だってあれを既に持っているでしょ?ということを、子供と同じような位置に立って怒っている。子供がグズグズ大変ならまだしも、娘は単に「こうしたい」と発言しただけである。それに対して何故落ち着いて説明できないのか。今度にしようね、今はあれがあるからね。って。それまでイライラしたことがあったとしても、そんな言い方をすることが、どうにも子供っぽい。子供と同じ目線に立って話すとかフザけるとか、基本的にそうだけど、説明すれば済むことをわざわざ威圧的な言い方をするのはやはりその人が大人になりきっていないからではないか。娘は途中から委縮し始めた。そのキーキー声に、他人の私までストレスがたまる。ああ、ここは子供が中心になって好奇心を満たす場所ではないのか。
 何となくどんよりした気持ちで席に着くと、近くに座っていた小さな男の子が、母親の作ってきたお弁当のたこさんウィンナーの足を数えていて和んだ。夫がストランドビーストの仕組みの説明を息子に話していると、寄ってきて顔を覗き込んでくる。別れ際に夫が「バイバイ、○○君」と言うと「なんで僕の名前知ってるの?」とか言う。可愛い。「さっき教えてくれたでしょ」と夫はニコニコ。母親が挨拶してくれて、その場を後にした。こんな親子もいる。
 そして、いよいよデモンストレーションが始まった。その日の都合で、その時間は小さな施設の中で、一つだけ紹介することに。「ウミナミ」という、別の地方で子供が名付けたらしいその作品の動きも、また面白かった。不思議な動きをするが、ちゃんと仕組みがわかっていれば、当然のことなのだろう。でも大きいからダイナミックで、そして当然崩れたりしない。引っ張るとイモムシみたいに動き、丸く折りたたむこともできるらしい。テオヤンセンは、NASAでも意見を参考にされるべく呼ばれているらしい。
 そのウミナミの説明を受ける時、席の空きの関係で、夫は二つ空いている所を見つけると、私と息子に座らせて、自分は一つ空いている所に座った。ああ息子は夫と座って、夫の話を聞きたかっただろうなあと思いながら、その場の雰囲気を感じて、さっさと黙って座った。夫の横には、おじいさんと孫にあたるのであろう5歳くらいの子供が抱っこされて座っていた。寝ていたところを夫が前を通ったことによって起こされたようで、夫が謝っている声が聞こえたが、その後グズることなく司会者の説明をおとなしく聞いていた。