その後、ウミナミを含めた説明が終わると、たくさんの人には触らせられないが、触りたい人は挙手してくださいと言われ、息子は手を挙げた。大人から子供まで多くはないが決して少なくはない人数が手を挙げた。すると、ざっと見回した司会の方が全員触っても良いと言ってくれて、皆が並んだ。
 息子が自分より小さな子を先に、と譲っていたことが微笑ましく思えた。夫は座っていたのだが、さっきまで大人しくしていた隣の男の子が「動かしたい〜」とグズグズ言い出した。何度も何度も「動かしたい〜!」と言うのに、おじいさんは何もしない。夫が後から言うには、どうも遠慮気味だったようだ。近くに座っていたおばあさんや、あと母親ではなかったのだろうか、ちょっと距離感のあるもう少し若い女性も特にリアクトしない。そんなに動かしたいのなら、触らせてあげれば良いではないかと思った。それこそその気持ちを満たしたら、彼はきっと心に残ってその経験が良い思い出になるだろう。今後の彼のちっちゃいかもしれないけど原動力となる瞬間があるだろう。それともうまくできないかもと思ったかもしれない。失敗したって良いではないか。失敗を怖がってやらないのであれば、ずっと失敗を怖がって行動を起こせない子になってしまいそうだ。うまくいかなかったら、誰かがフォローもしてくれるってものだ。そういうことも含めて学習ではないか。ああ、そんなに動かしたいという気持ちがあるなら満たしてやって減るもんじゃないだろうに! むしろプラスになるしかないだろうに。私なら自分の遠慮の気持ちがあって自分がしなくても、どうやるかわからなくて気後れしても、子供のためなら一緒に立ち上がって並ぶだろう。
 歯がゆく思っていたら、とうとう「動かしたい?」と発言した、のは……なんと夫。夫が普通に聞いている。「おじさんと一緒に動かしてみる?」何度か聞いて、隣の知らないおじさんに心を開いたその男の子は、とうとう立ち上がった。夫はその男の子と手をつないで列に並んだ。
 そして息子の番が回ってきた。嬉しそうに動かしてみる息子。目がキラキラしている。
 夫と、知らない男の子の番が最後に回ってきた。嬉しそうに動かしてみる男の子。笑顔だ。良かった。きっと心に残ったことだろう。好奇心がこの瞬間に満たされたことだろう。「楽しかった?」と夫やおじいさんが男の子に聞き「ウン」と嬉しそうな男の子に「良かった良かった」と言って、夫はおじいさんたちに感謝されていた。しかし動かしている夫の表情を見て「そうか。夫が動かしてみたかったんだな」と内心ニヤニヤした。
 帰りに夫の話を聞いていると「俺が動かしたかったんだよ」と笑っていた。やっぱり!と思うと同時に、男の子の好奇心の芽を見逃さずに付き合ってあげた夫を誇りに思う。高校生になっているからと恥ずかしい気持ちを、好奇心が上回った息子も誇りに思う。
 そしてテオヤンセンの、ストランドビーストそのものは本当に面白かったです。珍しい物を見ることができた。
 夫と息子はいつ作るのかわからないプラモデルを買っていた。私は面白くて、動かした二人の動画を繰り返し見ている。