息子にもその傾向があるようだが、ネットで音楽を選んで聴くこと、なんならアルバムの中の一曲や何曲かを選んで買うことについて、少し考えていた。
 私もそんな思いになることがある。
 「あの人のあの曲を聴きたい」と思うこと。「その人の他の曲には興味がないけど、あの曲だけは好き」と思うこと。そういう時に、アルバムで買うことを、ちょっともったいないと思ってしまう。アルバムを聴くと「やっぱり他の曲はどうでも良いや。あの曲が良い」と思うことは時々ある。ボーカルレッスンでも、課題曲だけ練習したいので、アルバムを買うことに抵抗ある時も。
 だから、ネットで自分の好きな曲だけ買って、繰り返し聴くのは合理的で確かにそうしたくなるのはわかる。アルバムがやっぱり気に入らないってなった時、お金がもったいないとかも思うしね! あと、アルバムが多すぎて、棚からあふれて邪魔にすら感じることもあるし。
 だけど。あえてやっぱりアルバムを買った方が楽しい。と私は思う。
 アルバムは、そのミュージシャンの色々な思いが詰め込まれていて、曲順なんかもきっとこだわって構成されているだろうし、アルバム全部をまとめて「その人のその時の作品だからだ!」
 ……とかは本気で思っていない。頭ではそうでしょうと思っているけど。
 私は単純に、色々な曲を聴きたい。
 アルバムを聴いていく作業というのは、面白いもので。
 最初は目的の曲があったり、一発目で気に入る曲があったりして、そういった曲はすぐに耳に馴染む。でも割と飽きも早い。こともある。全然飽きないこともあるけど。
 そして気に入った曲の前後の曲も気になってくる。最終的にアルバム全部の曲を聴き込む。夫なんかは聴き込まなくたって新しい発見を、アルバムの中の他の曲に見出すタイプのようだが、私は聴きこまないと気が付かない。いや、でも夫も「何度も聴いたはずなのに、だいぶしてからその曲の良さに気付くことってあるよね」なんていうようなことを言っていたくらいなので、私の言いたいことはわかってくれるはずだ。聴きこんでいるうちに、最初の頃は気づかなかった曲の良さを感じるようになる。気が付いたら口ずさんでいたりして、相当気に入っていく。なんならそのアルバムの中で「実は一番好きな曲」になっていたりする。人気のあるなしに関係ないので、その曲を歌いたくなってカラオケで探しても見つからないこともある。それくらい注目されない曲でも自分の中でお気に入りになっていたりする。だから私はアルバムを買って聴くのが好きだ。
 あと、ちょっと付け加えたいのは、映画のサントラが好きなので、必然的にアルバムになることも多いのかもしれないと思う。
 ネットで好きな曲だけ買って聴くことは、夫の言葉を借りて言うなら
 「新しく好きな曲ができる、というチャンスを逃しているよね」
 である。世の中の流れだから構わないんですけどね。