さて、気持ちの良い春が過ぎ、やっと七月終わりの蝦夷梅雨が終わると、いよいよ夏だ!そうだよ!八月だもん、さすがに夏は来るよ!
 ……と言いたいところだが、「私にとっての夏」は、最初の年にはやってこなかった。
 だって全然暑くならないのだ。
 日本の夏は、関西でしか経験したことがなかった。座っているだけで、汗が流れてくる感じ、膝の裏からボタボタと汗が落ちてくるあの感じ。と言っても「あの感じ」は、札幌に住んでいると、わからないんだよねぇ。
 学生の頃は「あぢー。」と、だらけながら、ゴロゴロ寝転がっていると、夕方いつの間にか寝てしまったり。カーッと照りつける太陽とじりじり涌いて出てくる湿気、アスファルトからの熱気にうんざりしながら、日傘を差して、シミの予防。サングラスまでかけちゃう。そして電車に乗ると涼しさを感じて、
 「うおぉーー!」
 と、気持ちが良かったり、冷えすぎたり。
 ニュージャージーの夏は暑いが、関西ほどに湿気はなく、カッと日が差すだけで好きだった。
 しかし札幌の夏。
 「こんなの、夏じゃなーーい!!」
 何度夫に向かって叫んだことだろう。ふざけて言っていたのではない。本当にガッカリ、というか、半ば怒って言っていた。
 だって最初の年の話をするなら、本当であれば、良くなかった私の体調を、ジリジリとした暑さが吹き飛ばしてくれるはずだった。
 なのに、いつまで経っても暑くならないので、私の体調もいつまで経っても悪いままだった。当時はその気候についていけず、自分の体調にうんざりした。
 暑い暑いはずの八月が、ちっとも暑くならず、扇風機一台でしのげてしまう。電車に乗っても冷房が効いておらず、車両の天井で風鈴が鳴っている。
 念のために書いておくが、地下鉄の風鈴を思いついた人に言いたいことがある。風鈴はあまり役には立っていない。外はさすがに少し暑くて、電車の中に涼を求めても、冷房が全然効いていないため、少々むさ苦しく感じる電車に乗らなければいけない。あの生ぬるい感じも最初はいやだった。
 しかし、これも段々と慣れてしまい、電力の無駄遣いをしなくて、良いことだなあと思うようになった。確かに涼しさは感じられないけれど。でも耐えられるのなら、あれで良いんじゃないかと思う。たまに、夏に関西の電車に乗ると、寒すぎてお腹が冷えちゃう。キャ。学生の頃から弱冷車を好んで乗っていた私は、夏に関西に行くと、普通に冷房の効いている車両には乗れなくなってしまった。寒すぎるよ、あんなん!
 *近年は、札幌の地下鉄も冷房が効いています。私の話は2000年頃の話です。