銀行通い、そして様々な決め事で酔いそうなほど気分が悪くなって、引越しをして、イライラしていた日々が過ぎ、とりあえず片付いたのが二週間後。しかし落ち着くのはもっと先である。
 引越しをして、しばらくは、「私はこの家にふさわしいのだろうか。」と変に恐縮するような気持ちがあった。
 自分たちがこの家をほぼ設計し、電気やカーテンなど付ける物を決めた。もちろん予算の限りはあるものの、こんな風に実現してしまったことに対する恐縮。
 そして、身の丈に合ってこじんまりしていると思うのだが、それでもアパートと比べたらずっと広い。このような「家」に住んで良いのかしらという訳のわからない恐縮。
 結婚してから初めて「家」というものに住んでいる。大丈夫かしら。ちゃんと管理できるのかしら。変な不安にしばらく襲われていた。今となっては大丈夫も何も、管理しないといけないし、そんなにでっかい家でもないのだから、楽しめばよいのに、何であんなに恐縮していたのだろう。私は今の家の広さがとても気に入っている。でっかくないと書いているが、もちろんちっちゃくて不自由するなんてこともないと思う。夫や子供にはともかくも、私にしたら、充分な広さなのである。
 最初の頃はそういった恐縮のような気持ちがあったが、やはり慣れていないというのが一番の気持ちだったというのが、今振り返って思うことである。自分の家、という実感がなかったのだろうと思う。
 そのためもあり、引っ越して間もなく夫の出張があった時、たかだか3泊なのに、夫を送り出した後、息子が寂しいと泣き、つられて私も泣いた。すごく心細かったのだ。結婚してから15年ほど、アパートにばかり住んでいた時と比べたら、この家は当時の私には広かったのだ。片付かないイライラと慣れない不安、広く感じ自分の家ではないような感覚からくる心細さで、私も息子も不安定だった。
 そして数か月後、まだ流行り始めたかどうだかっていう時期に、私と息子がノロウィルスにかかった。きっと疲れて免疫力が落ちていたのだろう。
 和室を作らなかったせいで、1階のリビングダイニングの間のフローリングに布団を敷いて、いつでもトイレにすぐに行けるようにし、そこで二人で寝起きした。寝ながら天井を見つめたり、トイレを何度も往復したりして、家にベッタリ関わっていくうちに、少しずつこの家に慣れていったように思う。慣れてきた、落ち着いてきた、と実感したのは、外出から戻ってきた時に「帰ってきた」と思うようになってから。数か月以上経ってからのことでした。