そうだ。フィナンシェについて書こう。
 フィナンシェを食べながら気が付いた。私はものすごくこのお菓子が好きなのだ。
 甘い物は嫌いではない。しかしお菓子と言えば、おかきとかスナック菓子の方が好きなくらい、しょっぱい物の方が好きである。そんな中、幼い頃からずっと今でも変わらず好きな甘い物は、アイスクリーム、カスタードクリームの入ったシュークリーム、プリン、チーズケーキ、と割と限定されている。もちろん、他の甘いものを食べたくなることもよくある。今は食いしん坊だし、他の甘いものの良さもわかるようになったので、あれこれと食べてみたくなって誘惑と闘うことがあるが、胃の調子、後の胃もたれのことを考えて我慢できることも多くなった。
 ちなみにあんこは子供の頃苦手で、大人になってから良さがわかるようになっていった。ショートケーキなんかは子供が好きなはずのものなのに、生クリームがあまり好きではなかったので、これも大人になってから好きになった。チョコレートもこれまで書いてきたと思うが、幼少期で好きだった以降、大人になるまでは苦手なくらいだった。
 しかし。半生と言われている焼き菓子は、結構ずっと好きだったと、振り返ってみればそう思う。高校生の頃、自分のため、そして友人におすそ分け、とバターケーキを度々作ってきた記憶がある。夫にもバナナケーキ、ブラウニー、マーブルケーキなど、バターが基盤になっているケーキを作ってきた。そして、フィナンシェもバターの風味が好きなのではないだろうかと思っている。
 タイ焼きやどら焼きも、あんこがあまり好きではなかった若い頃、勧められて食べる時、皮の部分を食べることが大好きだった。そう言えば書きながら思い出したが、カステラも好きだった。だからきっと、タイ焼きもどら焼きも、皮の部分が好きだったのだろう。あんこがたっぷり尻尾までとかを、店によってアピールされても、それほど嬉しいことでもなかった。むしろあんこをさっさと終わらせ、皮の風味を楽しみたかった。皮というか外側のことだけ言えば、パイならパイ生地、タルトならタルト生地が好きで、乗っている物より側の部分が好きなのである。原材料のことは調べたらわかるだろうが、フィナンシェは、私の中で、そういったお菓子の外側の部分だと思われる。バターの風味がたまらない。
 マドレーヌと一緒にされる場合があるが、マドレーヌとは違う。マドレーヌは貝型のお菓子、という風に区別されているが、どうも歯ごたえが違うように私は感じている。フィナンシェと比べると、ちょっと固めでサッパリとした風味。私はもっとしっとりとして、アブラ多めな感じが好きなのだ。作ってみると、きっとバターの量が全然違うのではと思う。お菓子を作り始めた頃に、両方作ったことがあるのだろうと思うが、もう覚えていない。
 フィナンシェを食べながら、どうしても鼻の穴が少し膨らんでしまう。風味が好きなため、そうやって匂いを吸い込み、美味しいなあと堪能しつつ「そうだ、フィナンシェのことについて書こう」と思いついたのだった。