「グレイテスト・ショーマン」を観に行った。
 映画予告から華やかで、歌がカッコ良くて、とても楽しみにしていた。
 舞台は1800年代半ばくらい。サーカスと言うと、1975年頃、アメリカでリングリングサーカスを観に行った私には懐かしい思い出がある。空中ブランコが華やかで、あれができるようになりたいな〜なんて思っていた。皆のパフォーマンス、アクションも派手で、動物も出てきた。子供たちは手元のライトに付いている紐を持って、そのライトをブンブン振って光をぐるぐる回したものだった。その様子がキレイだったし、子供たちの興奮度合いがその光のぐるぐるで表されているようなものだった。
 この「グレイテスト・ショーマン」は、リングリングサーカスの前身と言われ、実話をもとにしたものだという。でもそれは後から知ったことで、この映画を観ながら、リングリングサーカスの幾つかのシーンを思い出したことは言うまでもない。
 ストーリーは簡単で粗め、ありがちな展開。以前観た「sing」を思い出したシーンも幾つか。又、一つ一つのことを全然掘り下げない。深刻にならないし深みもない。でも音楽とダンスを際立たせたくて、単純にわかりやすくしたのではないかなと思う。
 何といっても、音楽とダンスなのだ。
 音楽はどの曲も良かった。「良かった」と一言で済ますのがもったいないくらい良かった。「this is me」は有名になったが、映画の中で観ると、もっと心を打った。
 20代の頃、友達や、夫となる彼に連れられて、ブロードウエイのミュージカルを幾つか観に行った。中でも「レ・ミゼラブル」で聴いた歌は素晴らしく、初めて「人が歌っている」という場面で心を打たれて涙が流れた。歌声とかその人の迫力とかその人の魂となった言葉とかに感情を揺さぶられたのだ。近くに座っていたおじさんも涙を流していた。国籍、年齢、性別、全部関係なしに同じように感動する姿がまた良かった。もしかして記憶をたどると、その時以来ではないかと思われる。「歌声、迫力、魂となった言葉」に感情を揺さぶられて涙が流れたのは。映画を観る前に何度か聴いた曲だったのに、そうかこんなに良かったのか。「もしかして更年期だから?」と自分で思うくらい、涙が止まらなかった。
 あと気持ち良いのが、ダンスである。かなりの迫力なのだ。
 これが映画を観終わった後の、サントラでもっと響いてくるから面白い。ストーリーを単純にした理由が、サントラを聴いていてわかってくる。涙が止まらなかった「this is me」はそれはそれで良いのだけど、それ以外の曲の良さが後になってとても映えてきている。オペラとして歌っているのが、ポップで全然オペラに聴こえてこないのだけど、この曲もこの曲でやっぱり良い。他の曲も90年前後に聴いたことがあるような一節が入っているような馴染みやすく作られている気がする。歌詞も、映画に合わせてとても言葉が力強く訴えかけてくる。歌詞の力、言葉の力を感じるように、映画の中でも随所で心に響くセリフが織り交ぜられている。言葉に傷つくというのは、どの時代でもある。今どきの若者にもSNSでこういう気持ちがとてもよくわかるのではないだろうか。そして言葉で救われるのもまた言葉の素敵な力なのである。