息子の夜泣きがひどかった2歳半頃まで、メニエールの症状は度々出たが、その後は気を付けていたものの、数年に一回は症状が出てきたし、そこまでじゃなくても、しょっちゅうフワフワした感じに見舞われた。本格的なメニエールの症状が出るのが怖いので、すきあらば昼寝をしていた。とにかく昼寝をしないと体がもたないのであった。そんなことで余計に、自分のことをするなんていう余裕はなかった。気持ちはもちろん身体的にも。
 晩御飯を作る時に頭がもうろうとすることがあまりにも日常化しており、それが昼間からかなり辛く感じる時は、ドリンク剤をのんでなんとか家事をするようにしのいでいた。
 それに低血圧がひどくて、朝もずっと弱かった。朝の機嫌が格別に悪いわけじゃなかったけど、とにかくボンヤリしていた。頭が冴えているなんてとんでもない。とにかくボーっとしたまま朝ごはんを作り、ボンヤリしながらテレビを見て朝ごはんを食べて、1時間くらいかけて少しずつ目を覚ましていた感じである。これはもう物心ついた時からそうであった。だから朝からよく喋る夫がどうにも信じられなかった。何故朝からいつも通り喋るのだと思っていた。息子は夫が話しかけても機嫌が悪いだけで、それほどボンヤリしている風ではない。息子は多分、低血圧ではないと思う。
 動悸がして目がさめるようになると、そういうことが減っていった。そのうち動悸がしなくても目がさめるようになっていった。気が付くと、朝でもテレビに対して普段通りに、というか夜のテレビ番組を観ているかのように、当たり前にツッコミを入れていたりブツブツ言ったりしている。息子もそれに返事をすることがある。血圧はもしかしたら正常値の範囲内になったのかもしれない。低血圧じゃないかもしれない! いや、低血圧だとしてもだ。はかっていないからわからないけど、朝、頭がボンヤリしていないって、こんなに物事が明瞭にわかるものなのかと、ふと自覚して驚いた。
 そして朝早く目がさめてしまうからと言って、昼間や夕方に眠いわけではない。むしろずっと頭も目も冴えている。晩御飯を元気に作れる。元気に……っていうか、これも多くの人にとったら普通の状態なのだと思うが、頭や耳や目の周りに膜がはったような、膨張したようなもうろうとした状態でなく、昼間の眠くないスッキリした状態で晩御飯を作ることができる。これは私にとって、どのくらいぶりだろう。もしかしたら、子供ができる前のことかもしれない。こんなに頭がすっきりした状態で毎日いられるのなら、そりゃあもう他のことだってできるかもしれない。みんな、こんなに元気なの?
 と言ってもです。まだ生理は来るわけで。やっぱりホルモンに踊らされている私は、生理前になると、この「スッキリしている!」という状態がまた二度と戻ってこないのではと思うくらいにまたボンヤリし始める。寝ても寝ても眠くて昼寝をたっぷりしてしまう。ひどい時には二度も昼寝をするし、運転していて耐えられないとやっぱりカフェに入ってウトウトしないと、運転が危なくなる。そして生理がやってくると、やっぱり最低限の家事をするのが精一杯。痛くて、重い物を持つのも辛い、冷えも辛い、で、なんにもできなくなる。