ヴォーカルレッスンのことがしばらく続きそうですね。
 最初の課題曲となっていたアバの「S.O.S」は、意外と難しくて、カラオケでもなかなか90点を超えなかったし、まだ声もろくに出せない私に、先生も教えにくそうで、まずは『美女と野獣』を歌えるようになりましょうとの提案があった。音を伸ばす部分が多いので、声を出す練習となるだろう。だけど、歌詞は追えても、あんなに美しく歌える気がしない。事前にカラオケで練習してみたが、やっぱりどんな感じで歌えば良いのかよくわからない。
 他の曲では以前よりかなり声が出るようになり、90点以上取れる曲も増えてきた。ただし、やっぱり20〜30分しないとしっかり声が出ないので、5分くらいで出るようにならないかなあと思う。
 レッスンも、「できない」と思うことの方がいつも多くて、その事実だけだとちょっと泣きそうになるくらいだけど、受けている時も受け終わった時も、気分は高揚している。とにかく楽しいのだ。伸びしろがある。と思うようにしている。何年かかるかわからないけど。私だってピアノをしていたことがある。どのくらい練習しないと上手にならないか、日々の時間も年数もよくわかっている。こんなおばさんになってから始めて月1回のレッスンで、そう簡単にうまくなるはずがない。母がヴァイオリンの先生である。私は音楽を決してなめてはいない。あっちょっと話がそれますが、ヴォーカルレッスンを始めたことを、母が意外と喜んでくれたことに驚いた。素人として続けていくだけ、しかも月1回だけなのに、音楽をしてくれて嬉しいと率直に言っていたことが、私も嬉しかった。ああそうだったんだ、そういう感情を持つんだと思いました。
 レッスンのことに話を戻します。
 毎回、楽しいのだが、この前すごい発見だと思ったのは、同じ音でも幅があると気づいたことです。いやあわかっていたんだけど。改めて驚いた。
 テレビで歌手がうたう時に、「この人、ピアノの鍵盤では半音もずれていないんだけど、4分の1くらいずれてるのかなあ」と夫と話すことがある。ちょっとだけ気持ち悪い。先生が一つの音を弾き、その音をなぞった時、先生がなぞる音と比べると少し違う。私は8分の1くらいずれているのだろうか。先生は私より4分の1くらい高い気がする。どちらの音も間違ってはいなさそうだけど、先生の音と私の音はあきらかに違う。そんなことが何回か続いた後、先生がおもむろに説明をし始めた。
 「ピアノの一つの鍵盤の音の中にも幅があるんです」っていう内容。少し高い方が聞いている人が気持ちが良いということと、音を発している人が聞こえている音と、周りから聴く音とでは少し違う場合があるということ。要するに私の音が、ほんの少し下がっているのだ。ピアノの鍵盤の一つの音の中の多分一番下の音なのだろう。わかる。そうですよね。気が付きました。でも少し高めに意識することで変わってくるのかどうか自信がない。自信がないけど、意識してそういう風に声を出してみるしかない。
 ヴォーカルレッスンで気づかされるのは、声を出す時にあらゆることを「イメージ」することである。