チョコレート自体に関しては、結婚してしばらくすると、少しずつ食べるようになっていった。夫がチョコレート好きで、私も少しずつ挑戦していったようなムードもある。
 最初に口にして気に入った頃はコーヒーと合うというような理由だった気がする。まだ柔らかさと甘さのバランスが苦手だったが、ビターチョコや、特にナッツが入ったチョコレートは、歯ごたえの楽しさと、元々のナッツ好きなために、気に入り始めた。
 大学生の頃のこと。バレンタイン、本命の彼には、ゴディバのチョコをあげる、なんていう噂が出始めた。本命には手作りチョコでしょというのが定番だったために、その噂には驚かされた。でもその値段に納得させられるのである。そうか、義理ならこんな高いの買えないよなあ。オシャレとか外見とかスタイルとか、外側ばかりを気にするような男子が、確かにゴディバを欲しがっていた。今なら声を大にして言える。キミらにゴディバの良さが本当にわかっていたのか! 味なんかよく知らずになんとなくオシャレだから良かったんだろうと思うと、無性に憎たらしくなる。
 夫と私は、一時ゴディバにハマりそうになった。夫はデパ地下などでゴディバの店舗を見つけると、お小遣いでちょこちょこ買っては試していた。息子と私はそれを分けてもらっていた。ちなみに、息子はチョコレートに関しては舌が肥えていると思う。
 そのうち、日本が良い市場となるのを海外の名将たちが知ることとなったか、どんどん質の良いチョコレートが売り場に出るようになってきたと思う。
 最近では、ピエール・マルコリーニという人のチョコレートにちょっとした衝撃を受けた。某番組で紹介されていて、夫が東京出張の時にお土産として買って帰ってきた。こんな薄っぺらい一枚が安いケーキ一つ分だと思うと、まずそれが衝撃。全部味が違うので、家族三人で食べ比べするには、テレビ番組のように、ナイフで切るしかない。貧乏くさいかもしれないが、それでも高いから貴重な一枚をだいたい三等分して食べた。たかだか薄っぺらい小さな一枚の三分の一に、私たちは風味を目いっぱい感じ、一つ一つの味わいが違うことを知った。
 ある時には、やはりピエール・マルコリーニの、板チョコだけど丸々一枚同じ味の物を二種類買って帰ってきた。三人ともビターが好きで、その風味に感心しながらひとかけらずつ食べた。もう一枚はミルクチョコ。それはさすがに甘いのだろうと思って食べたが。甘さは感じるものの、しつこくない! 喉痛くなんかならないし、脂っぽさもない。ビターより少し甘く口触りがなめらかなだけで、さっぱりしつつ風味はしっかりしている。感激しながら三人で食べた。
 こうやって高いチョコレートに感心させられているが、スーパーのメルティ・キッスという生チョコ風な安い物も結構好きで、時々買って食べることもある。一つ食べれば満足なので、甘い物をほんの少し欲している時にとても良い。夫もアポロチョコみたいな物も好きだ。そうそう、ポテトチップスのような物にチョコレートがついた某会社のお土産品も大好き。「これは人間をダメにする!」と夫と言いながら、食べることがある。
 チョコレートは甘いだけではない。とっても奥が深い。