幼い頃、チョコレートは大好きだった。
 特に好きだったのはキットカット。キスチョコやm&m、リーシーズという会社の、甘くて喉が痛くなるようなチョコレートも好きだった。また、ペコちゃんのパラソルチョコやキャラクターもののペロペロチョコの形状や色が可愛くて大好きだった。
 でもさんざん食べ過ぎたのだろうか、チョコレートに飽きてしまった。喉に甘さが残るのと、食べているそばから歯も痛くなるような気がして、好きではなくなってしまった。あのしっとりした歯触りも好きではなくなってしまった。小学校二年生くらいからだろうか、チョコレートが苦手になっていた。ちなみにコーラなんかもその類。大好きで飲み過ぎて急に嫌いになってしまった。
 チョコレートに関しては、チョコレートケーキとか、チョコ味の生クリームとか、シュークリームのチョコクリーム、アイスのチョコ味、全部いやになった。ポッキーなんかもチョコレートがついているからいやで、食べることになった時には、チョコを先にねぶってしまって、中のプリッツのようになった棒状の物をポリポリする楽しみのために頑張って食べるというくらい、本当にチョコが苦手になっていってしまった。
 でも、ケーキ屋でアルバイトをしていた時に、「ザッハ」というスポンジがチョコレートだけど、しっとりしつつ固くて、甘すぎないケーキに出会い、ほんの少し固定観念が崩された。
 夫と出会ってからは、バレンタインの時に必ずカカオの入ったケーキを作るようになった。それはマーブルチョコレートであったり、ブラウニーであったり、チョコレートがスポンジのケーキだったりした。チョコレートを溶かして型に入れ、チョコレートを作るという、なんだか「一旦、壊して作る」みたいな、それ手作りと言えるのか? っていうチョコレートは納得いかなくて作らなかった。それにケーキは作った後に自分も食べることができるので、チョコレートが苦手でもケーキなら大丈夫になっていた私は、カカオの入ったケーキを毎年作った。
 これを子供ができてからも続けていたが、ある年、二人が一生懸命食べてくれている様子を見ながらふと、「この二人は、私が大量に作ってしまうから、無理して食べさせられているのでは」という疑念がわいてしまった。最初の一口こそ「美味しい」とか言ってくれるけど、その後無言、その後も2〜3日間、毎食のように出てくるケーキが、二人にとって修行のようなものになっていないだろうかと、頑張って食べてくれる二人が気の毒になってしまった。そんなこと言われていないのだが、何となく「食べなくちゃ」と食べている様子が申し訳なく、哀れになってしまい、翌年から作ることをやめてしまった。