ヴォーカルレッスンを始めて、自分の中の色々なことに気付くようになった。
 声を出すこと自体に自信がないこと。そのせいで、喋ることにも自信がないこと。自分を表現することもつい恐縮してしまうこと。
 音楽に関しても、元々ピアノを母に習い、ピアノの音も大好きだった。ヴァイオリンの音色は悲しくなるから、習わなかったけど、今でも聴くと、心に響いてくる。ドラムをしてみたかったけど、どうすれば習えるのかわからなかったし、自分はピアノのようにメロディーを奏でる方が好きだと思い込んでいたので、そこまで至らなかった。リコーダーを吹くのがとても好きで、学校で習った曲をウチでよく練習した。息子のミュージックスクールで、バンド演奏発表会があるのだが、その時もギターやベース、金管楽器などもカッコ良いなあと思っていた。やっぱり楽器を習いたいなあと何度も思った。ピアノに何度も向かうが、いつも続かない。だけど、いつかピアノを復活させたいと思っていたし今もほんのり思っている。
 まさか自分がヴォーカルレッスンを受けるなんて、思ってもみなかった。
 突然思い立って始めたものの、私にそういう兆候はあったっけ。思い返してみた。
 車の中で、課題曲となってしまったアバの曲を何となく歌ってみたりしていると、ふと5歳頃の自分を思い出した。リビングで、父があらゆるレコードをかけてくれていたこと。主にディスコミュージックやビリー・ジョエルエルトン・ジョンビートルズカーペンターズなど。中でもディスコミュージックとアバの時は、私の気分が良くなり、一人でリビングで踊っていた。当時だったか帰国してからだったか忘れたのだが、その頃に見た夢で、通っていた学校の途中にあった工場か廃墟のような所を舞台にして、私はディスコミュージックの曲を歌い踊っていた。何故かアバのメンバーもいて、私はスターの気分で楽しくて、起きてからもしばらくふわんとした気分でいたのをよく覚えている。あんなふうになれたらなあなんて思っていたのだ。今、課題曲をカラオケ大声で練習している時、その気持ちを実現できているじゃないか、これで充分だよなあと思う。こんな風に大声で歌って気分良くなりたかった幼い頃の自分がいたではないか。
 カラオケがはやり始めた頃、私は周りの友達ほど上手ではなかったが、歌うのが大好きで、本当はマイクを独占したいくらい歌い続けたかったし、友達と何度でもカラオケに行きたかったことも思い出した。あまり言うと「え〜……」とか「好きやねえ」とか言って引かれそうだったから、我慢していたことも。
 そうか。私、歌うことが好きだったんだ、ずっと。
 確かに、思い付きもチャンスも突然やってきた。だけど、ずっと私は歌いたかったのだ。自分の体を楽器にするなんて、楽器を扱うより簡単で指先も使わない大したことではないと思っていた。しかも声楽やっているような人、上手なミュージシャンなどは、天性のものだから、私が練習したところで、とか思っていた。でも始めてみたら、なんと難しく、なんと楽しいものなのか。指先は使わないけれど、自分自身を上手に鳴らすというのは、意外と奥が深い。上手に歌ってみたい曲は次々とある。