ヴォーカルレッスンを真剣に受けている。
 そう、真剣に受けている! 疲れる!! 毎回汗がすごく出る。部屋が暑いのか? いや、カラオケボックスでも自主練をしているが、そこでも毎回汗だくである。
 初回に受けた時は、腹式呼吸を重点的に習い、それを心掛けてカラオケボックスに行ってみた。日々、車の中で腹式呼吸をしてみたり、息子を起こす時に腹式呼吸の練習をしているとギョッとされたり、とにかく呼吸の練習を度々やってきた。無理矢理お腹を押して出た声は、つい大きくなってしまう。その声から急に変化させるのが恥ずかしいからそのまま大きな声で歌う。そうやっていると、カラオケの採点で90点超えるようになってきた。ものすごく嬉しい。最初の発声の瞬発力も前よりほんの少し改善されたように思う。しかしこれで95点以上出すのはまだまだ先のようだ。
 ヴォーカルレッスンを始めてから、呼吸の仕方などを身に着けるために家でも少しは発声の練習をするが、思い切り声を出しての歌練習はどうしてもカラオケボックスとなる。採点も一応基準に入れると張り合いになるし。だけど、1時間〜1時間半が精一杯になったし、そのくらいで切り上げて、こまめに言った方が上達すると思ったのだ。1時間だと500円もしないわけで、1か月に1回のレッスンの合間、2回は自主練として行くことにしている。素晴らしい趣味を見つけたような気分だ。発声時の瞬発力も出てきたおかげで、1曲目からまあまあ声も出るようになってきた。ただ、何となく練習に行くことを言うのが恥ずかしくて、夫にも自主練を終えてから話す。
 その後のレッスンでは、相変わらず発声が難しいと感じている。先生は当たり前だけど相変わらずおキレイだし、明るい方だし、何とか素人の私に伝えようという気持ちが良く、レッスンは楽しく感じる。でも楽しくは感じてもできないものは、なかなか上達しない。以前も、楽器と一緒で音を出すまでが大変のようだと書いたが本当にその通りなのだ。先生の説明は、ヴァイオリンを慣らす時のようなことをイメージさせられた。中の空洞に響かせ鳴らすという感じや、音の出し方が強すぎても弱すぎてもいけない感じ、音を自分で少し調整しながら強く長く鳴らす感じ。その全体の加減とか難しいことを言っているけど、楽器を慣らす時の基本だと思う。ピアノも、一つの鍵盤を鳴らせばもうその音は鳴るけど、こちらのタッチで音色は変わるけど、弦楽器や管楽器なんかは、中の空洞と音の関係が強いので、それを鳴らすだけでも難しいことはさすがに私も知っている。
 私の音は、口先だけで鳴らしていることにも気づかされた。それは自分で話していて感じるけど、歌う時もそうらしい。音を奥へ引っ張っていく感じ。奥へ響かせる感じ。喉を開ける感じ。上へ突き抜けさせる感じ。「なるほどなるほど」色々言われる度にそう思うのだけど、いざ声を出すとなると、声を出すので精一杯で、そのイメージを何となく描けそうなところで終わる。それに描けそう……なくらいでやっぱりよくわからない。舌で口の中をせまくしないように言われるけど、それも難しい。
 肩に力を入れないようにとか、口角を上げるようにとか、何だか日常の生き方まで注意されているような気分だ。でも決して嫌な気分ではない。