今回は一本の映画のことだけではなく、二本、いや三本の映画について一気に書く。
 実は二本の映画を、一日の間に映画館と家で観て、そのうちの一本はパート1があり、それを何日か後に観返すことになったのだ。
 当日最初に観た映画は『超高速 参勤交代』であった。これにはパート1があって、映画館に観に行ったのは、続編の方である。続編から観ても充分面白かった。友情を主として、わかりやすく憎たらしい悪者がいて、それを打開すべく頭を働かせて頑張る、本当によくあるパターンだ。笑えるシーンがたくさんあって、幾つも出てくる打開策にはかなり笑った。観終わった後、例によってあの場面が面白かっただの、あれはどうなっていたのかだの話して帰った。
 そして帰宅後の夕方、おもむろに夫がテレビの画面で映画を観始めた。どうしたの突然と思ったが、これが観始めるとめちゃくちゃ面白い。
 『パイレーツ・ロック』という、タイトルからしてB級っぽいねと同じく映画好きの知り合いからツッコミ入れられたように、確かにB級なのだ。何より下品だ。画面全部が裸の女性だらけ、厳密に言えばプラス男性一人、というシーンもあった。全員がこちらを向いてキョトンとしているシーンなので、笑ってしまった。とにかく品はないのにあまりいやらしいとか恥ずかしいとかそういったムードのない映画である。
 時は60年代イギリス。ロックに対してあまり快く思っていなかった政府の堅い考えの人たちが地上波ラジオでロックを流すなと決めたせいで、ロックは船の上から流されることになった。実際に60年代のイギリスはそうだったらしい。そして子供から大人まで、そういったラジオ番組は大人気だったらしい。各場所でラジオを聴く人たちの様子が何度も流れる。ラジオは一日中続く。DJはおとなしい人から下品な人たちまでたくさんいる。一応主人公は、母子家庭で育っていたが素行が少々悪かったせいで高校を辞めさせられて、母親に更生としてその船に送り込まれる。が、更生と言うにはほど遠い下品でだらしがない船上なのである。だって本当はそんなラジオ(厳密に言えば音楽)を流してはいけないルールなのだから。しかもどうやら父親だと思しき人がいる。でもそれがわかってもドラマチックではない。「え。あ。」程度で、複雑な顔をしているだけだ。そしてどうにも本当に父親なんだかハッキリしない。とにかく「一般的な大人が思う更生」にふさわしくはないが、偉い人たちのルールより自分たちのやりたいこと、人々が求めていることを素直にする様々な年齢の彼らに、主人公は溶け込んでいく。主人公と言っても、あまりその人をクローズアップして「成長、成長」って感じじゃないのだ。ただそこで過ごして、そこにいる仲間がめちゃめちゃでいい加減なようでいて一人一人が愛おしい。一人一人が心から素直に泣いたり笑ったり落ち込んだり励ましたりしている。ひどいシーンに呆れたり笑ったりして、涙なんか出るシーンもないので一滴も目に浮かぶこともないけど、何故か感動する。
 この映画のせいで、『超高速 参勤交代』がかすんでしまった。そして、パート1を観ながら、続編とのつじつまを考えてなるほどと思ったり、改めて時代背景を少々学習したりするのだった。いえ、その二つも本当に面白かったんですってば。