嫌いな食べ物が多くない食いしん坊なので、やっぱりすぐに好きな食べ物に話題は移る。
 その中でも今回は、卵について。
 おでんが好きな人で「卵が‘一番’好きってわからない」と言う人がいるしその意見、わからなくはない気がするけど、私はおでんの中で、卵は一番か二番を争う。何と争うのかと言えば、うずら卵の入った練り物である。結局卵なのである。
 以前も書いたように、幼い頃、ランチボックスに入れるお昼ご飯は何が良いかとリクエストできた時、母に毎日のように卵サンドをねだっていた。ゆで卵にマヨネーズをあえたシンプルな物である。私は卵の中でもとりわけ、このゆで卵にマヨネーズを和えたものがめちゃくちゃ好きなのだ。体にとても悪そうだ。もちろん、他の卵料理も好きである。目玉焼き。卵焼き。スクランブルドエッグ。ああそうだった。ゆで卵よりスクランブルドエッグにケチャップをかけた物がものすごく好きだ。これも体に悪そうだ。いや、悪いのはマヨネーズやケチャップであろう。
 他に母の作る卵焼きは、とびきり甘くて私はそれが大好きだ。でも自分が作ると砂糖をどっさり入れる勇気が出なくて、ついつい甘さ控えめになってしまう。だから息子は甘さ控えめの卵焼きに慣れ親しんでしまっている。それもそれで美味しいのだけど。
 私よりさらに好き嫌いの少ない息子だが、固い黄身が苦手のようで、色々工夫をしている。柔らかい黄身ならむしろ好きなようなのだが、あれこれおかず作りながらなかなか卵だけに集中することができずにタイミング良く上手には作れないので。ケチャップやしょうゆをかけたり、固めてオムレツにしてみたり。とにかく柔らかめが好きな様子。いっそ生卵が好きなんじゃないかと思う。私はあまり好きではないのだけど。なんか怖いし。
 私が生卵と初めて出会ったのは、幼少期。母が体調を崩して、父が兄と私の朝食の準備をしてくれたのだが、目の前には目玉焼きではなく、生卵が皿の上にどろんと乗っていて、吐きそうなのを抑えながら「早くママが元気になってくれないかな」と願ったものだった。その次が塾からの旅行の時。殻のついた卵がコロンと皿の上に寝転がっている。んんん??……帰国子女だった私は「また何やらわからない文化が目の前に唐突にやってきた」と困惑した。ゆで卵ならこんな風な置き方はしない。それには手を付けずに周りの様子を伺っていたら、信じられないことに、男の子たちがさっさとそれを割って、ご飯の上に乗せてしょうゆをかけ、食べ始めた。目の前を疑った。でも他のおかずが質素で、卵を食べないとお腹が空いてしまうと思った私は皆のマネをして、卵を割り、ご飯に乗せてしょうゆをかけて食べた。えづいてしまった。ずっと生卵だけは卵の中で苦手だった。
 だけど、今は平気。すき焼きなら生卵で食べたいし。一時1パック100円前後の卵を買っていたら、母に「何でも安く買えるに越したことはないけど、卵だけは気を付けて」と言われ、卵だけは良い物を買うようにしている。
 とりあえず、卵料理は一通り大好き。コレステロール値が高いので、気にしつつ、でも関係ないとかいう情報も聞きつつ、やっぱり心配なので、そこそこにしながら、とにかく卵は大好きなのである。