ずっと話題になっていた『君の名は』をとうとう観た。
 あまりにも話題になり過ぎたのと、女子中高生がキュンキュンするだけの恋愛映画なのではという偏見があり、まあいつかブルーレイででも観たら良いやという気分になっていた。それでも外国で上映された時にも絶賛されていたので、そんなに良いのかなと思い、ちょっと観たい気持ちが湧いてきていた。その頃に、夫がやはり出張の仕事が終わり、飛行機に乗るまでの時間が少しあったため、『君の名は』を観てみたと言う。そして「良かった。もう一回観たい」と言う。
 休みの日に、無理やり息子に時間を作ってもらい、三人で観ることにした。
 夫が、何故これを私と息子にみせたかったのか、観終わるとわかる。どの部分を切り取ろうとしても、どうにもネタバレになってしまう。又、日常生活の中で「そういうことってあるよね」という場面が、とてもファンタジックに描かれていて、もしかしてそういうことがあったのかもというふんわりした気持ちさせられる。そんな「あるある」ネタを口にする時に『君の名は』の、あの場面みたいだよね、『君の名は』では、こういうことだったから、本当はこうかもよ、とか、確かに言いたくなっちゃうのだ。
 そんなわけで、印象に残るどの部分を切り取って書こうとしても、どうにもネタバレになる。ラストにつながるシーンやあまりにも大事な部分は書かないにしても、構わずに色々書いていきたい。
 まずはどういうことに関しての「あるある」か。である。
 一番短絡的に言えば、デジャヴです。あのデジャヴの時の気持ちって、独特ですよね。わっこんなことあった!っていう思いとと共に、もや〜んとした気持ちが残る。不思議な気持ちになり、こういう気持ちってどうして起こるんだろうとか、いくらメカニズムを聞いても納得せずにやっぱり奇妙な気持ちになる。
 それから、夢の場面。夢の中で何度も出てくる場所。それを現実世界で「あっ。ここと似てる!」と思った時のやっぱりもや〜んとした気持ち。きっとその場面が切り取られて脳に焼き付き、夢となって出てきたのだろう、と思いつつ、どうしてこんな何でもないような場所が?って思う。目にしたにしては一瞬だし。それでも科学的に説明できないような気がして、そうそうきっと一度か二度、目にして、自分が気づいていないところで記憶として残っちゃったんだなあとか面白がってみる。
 でもやっぱり本当はちょっともや〜んとしている。だって、やっぱり本当は変だなあと思うんです。なんでこんな場所ってどうしても思ってしまう。ただ考えても仕方ないから「きっとその場面が切り取られて脳に焼き付いて」とか思うようにしている。
 あとは、子供の頃や特に思春期にあったことをなんとなく思い出せないこと。誰にでもある。思い出そうとしてもボンヤリした記憶。そして当時、何故か憑りつかれたように好奇心をかきたてられること。そういったことが何故なのか、普段は考えないけれど、もしそれが『君の名は』のようなことがあったとしたら、すごくロマンチックだと思うのだ。