近所に可愛い犬がいる。
 子供の頃、祖父母や両親が、動物好きではないと思っていたので、飼うことは許されないのだろうと思い込んでいた。でも私は動物を見ていることは、元々好きな方である。テレビ番組で動物が出ると、食い入るように観ていた。
 何かペットを飼ってみたかったが、金魚くらいで我慢することにしていた。そのうちメダカも飼うのだが、増えすぎて恐ろしいことになった。大変だった。もうあの水槽の水を交換する時の生臭い匂いはいやだ。できれば触れ合える動物が良い。
 従妹の家庭で犬を飼っていて、可愛くて仕方なかった。泊まりに行くと、朝布団にもぐりこんできて、背中合わせに寝てきたりした。しつけは大変そうで、ちゃんと叱るということが私にはできなくて、なめられていたと思う。でも可愛かった。
 さらに、ニュージャージーに親友と住んでいた頃、彼女は猫を飼っていた。猫がなつくかどうか心配だったが、意外となついた。いや、二匹いたのだが二匹目の猫だけが、相当なついた。その猫ちゃんは、私のことが気に入ってくれたらしく、しょっちゅう甘える行動を示した。喉を鳴らして、体の上を踏み踏みするのである。私が泣いていると、いつもそばに来てじっと見ていたし、寝る時には必ず私の両足のひざ辺りの間で寝た。そしてなかなかガタイの良いその猫ちゃんの、人間のおじさんのようないびきを聴きながら寝たものであった。でもやっぱり私は飼い主じゃなくて気楽なものだった。
 いざ飼うとなると、最初のしつけがわからないし、年間何十万か、かかることを覚悟して飼わなければならない。亡くなる時も気持ちや精神状態が普通でいられるはずがないと思ってしまう。いずれにせよ、私が主に世話をしなければならないので、責任が持つとか自信がない。どこか旅行に行くとき、こんな田舎でペットホテルとか聞いたことがない。息子にも兄弟姉妹を、と思っていたので、せめてペットをと思うのだが、息子も「そんなに責任が持てない」と自信がない。色々自信がない。
 子供ができなかったら犬を飼おうと夫と話したことがある。結婚して5年間、子供ができなかったので、そういうことも少しは考えていた。二人でハムスターを飼ったこともある。でもハムスターはしつけることもできず、時々唐突に飼い主の手をかじるので、あまりベタベタと触れ合うことはできなかった。
 夫と野鳥の話をしたり、野鳥を見るのは可愛くて楽しいが、やはりもう少し「コミュニケートしている」実感が少しほしい。
 そこで近所の犬を無責任に可愛い可愛いと楽しむことになっている最近である。確か、ちょっと前は違う犬だった。年老いている感じはしていたが、しばらく静かになった後、新しい犬が来た。黒毛の柴犬だ。