時々一人カラオケに行くようになった。
 何か月かに一回、二時間、ドリンクバー付きで800円台の趣味なんて、安上がりなもので、ちょっと味を占めてしまうようになった。そこで英語の歌ばかり歌って楽しんでいることは、帰国子女のカテゴリーに書いた。最初はそれで良かった。日本語も好きな私は英語を「発音すること」が好きで、時々英語を発音したいという強烈な飢餓感に襲われる。でもまた行って歌っていると、やっぱり音楽のカテゴリーに書きたいことが出てきた。何故なら、歌が下手だからである。
 改めて英語の歌は、母音の部分が不安定で難しいことを感じ、さらに前回音楽のカテゴリーで書いたテイラー・スウィフトがすごく歌が上手であることを感じた。彼女は色々な声を持っていて、一枚のアルバムの中でももちろん、一曲の中でもそういうことを感じて魅力的なので、飽きない。しかし「22」や「stay stay stay」、「holly ground」「starlight」はともかく「trouble」「shake it off」なんかは難しくて仕方ない。英語のスピードはある程度練習したら、そこそこについていけても音程なんかは練習したってついていけない。音程がわからないところが出てきたら適当な音で歌って変な感じになっている。
 そして、そういう難しい曲を「身につけたい」強い思いはないが、もう少しまともに歌えたらという気持ちはある。何でこんなに下手なんだと悲しくなり、もはや楽器ではなく歌うことを習いに行こうかと思うくらいである。難しい曲でなくて良いから、簡単な曲でも良いから、英語の歌を、母音の部分を上手に調整できるよう、歌えるようになりたい。
 しかも何度か一人カラオケで歌い続けているうちに、もう一つのことに気がついた。「一時間くらい経たないと、声が出ない」ということである。これ、どうにかならないものか。ボイストレーニングでも受けようか。歌う前には発声練習しないといけないのか。
 最初の一時間、女性の歌を歌う時に二つ三つキーを下げないと、あまりに声が出なくて音痴も甚だしいので、座ってボソボソ歌っている。そんなつもりはないのだけど、後から考えると「ボソボソ」歌っている。しかも大きな画面だとあごが上がって歌いにくいし、字が大きすぎるので、老眼入っている私には、隅っこにある小さな画面を少し離れた所から見て、座ってボソボソ歌っている。いや、ボソボソ歌っているつもりはないのだけど。
 そして一時間が過ぎた頃、喉が痛くなってくるのがいやで、立ち上がってお腹から声を出すように心がけて歌う。その頃には段々高い声も出てきて、キーを下げなくても良くなってくる。最初の方で歌った曲も下げずに声が出る。出ない部分もあるけど、最初の頃よりずっとマシだ。立ち上がると目の前の大きな画面でも良い距離感ができ、あごもあがらないのでますます歌いやすい。そしてノリノリになってくるので、自分の世界に入って楽しくリズムを取りながら歌えるようになる。二時間はあっという間に過ぎる。
 しかし最初の一時間はなんだったのだと思うのだ。最初の方は、声を出しやすい曲を歌うべきなのだろう。でもこれは一人で行った時のこと。皆で行ったら順番がある。声が出ないうちに終わることになっているのだなあと今さら気がついた。何とかならないものか。