大学生から結局ずっとそんな感じで社会人の間も過ごしていたが、夫と出会って、誠実堅実でありながら、色々なことに好奇心を持って話していて面白い人がいることを知った。周りが夫となる彼の仕事の話をしてくれても、内容が全然ピンと来ていなかった私は、初めてのデートで何なのソレと聞いたことは覚えている。しかし中身を聞いても「えっちょっと何言ってるのかよくわからない」と、サンドウィッチマンの冨澤ばりのツッコミというかボケと言うべきか、そんな風に言いたかったくらい、理解はできなかった。
 夫は「理系」と言われることに釈然としないかもしれないが、私にとっては立派に「理数系」。国語は苦手だったそうだが、それでも一般的に見てできていた方なのではと思う。兄も両方できた方だが、多分ギリギリのところで夫と逆なのではないかと思う。
 兄のことはさておき、文系男子は、全体に女性の気持ちを理解できる人が比較的多い。だから、こちらも喋りやすくて一緒にいて楽な人も多いし、そういう女性の気持ちをもて遊ぶ人もいる。そして私はてっきり文系男子と結婚するものだろうと思い込んでいた。
 夫は興味の対象が広いので、私が好きなことでも話が広がる。物腰も柔らかい。それじゃあモテモテじゃないかと書きながら思ったが、夫はあまり男性とか女性とか意識しない、させない人なのだ。彼は「人間」と喋っている。当たり前のことを書いている。いやつまり、異性を意識するようなところがあまりないから、女の人にとったら大事に扱ってもらっている感じはしないし、男の人に好かれやすいようだ。と私は思っている。そういうところが、女性側にしたら分かれると思う。夫自身も女っぽさを売りにした人は苦手で、あれっ、だから私が夫に好かれたのだろうかとか迷路にはまってしまいそうだが、まあ良いことにしよう。とにかく男女の区別なく話すので、あまり男とか女とか意識させない。
 そして、夫を通じて夫の先輩後輩、友人たちと話す機会が断然増えて知ったこと。それは理系男子に対して私は偏見を持っていた!!ことに気付いた。彼らは無口で口下手で偏った人たちだと思い込んでいたけど、やっぱり興味の範囲の広い人もいるし、喋るのが好きな人もいるし、女性に対して物腰柔らかい人もいる。考えたら当たり前なのだ。もちろん、口下手で表情の乏しい人や偏った会話しかできない人もいる。そしてチャラチャラした雰囲気の人もいる。でも全体的に、堅実で真面目でユーモアもある。私は意外とこういう人たちの話題の豊富さや冗談を聞いているのが楽しい。
 そうやって夫の周りの人たちを見ていて、理系の子たちの特徴を、以前とは違う形でとらえることができるようになっていった。彼らはシャイなのだが、話すと可愛い。単にシャイだという人が多いのは感じる。その押し出しの感じは文系とは違う。シャイな人に対して、若い頃はどうしていいかわからなかったことが、もうおばさんだから動じなくなってきてしまった。するとどうだろう。一見無表情で反応も薄いように見える彼らに全然関係なく、おばさんは一人でも喋ったり笑ったりできるようになってしまった。あれ。これは理系男子相手と関係ないかな。でもおかげで、相手に打ち解けられなくても平気な感じは、夫やその周りの人たちで免疫がついた。彼らは決してイヤなわけでも敵対心を持っているわけでもない。うまく表現できないシャイな人だという場合が多いだけなのだ。