夫が、こんなに映画を(むしろ「映画館を」)好きになるとは思っていなかった。
 まだ夫と出会う前は「結婚するなら映画が好きな人!」とか言っていたけど、今振り返ってよく考えてみると当時の夫はそうでもなかった。でも何となく好きではあったらしい。
 夫と知り合った頃、『singles』という映画のビデオを貸したことがある。他に、付き合っている頃も、結婚してからも、デートで何回か映画を観に行ったことはある。何回か行った中で、『Wedding Singer』は、ラブコメディとして大好きだ。他に『ハリーポッター』とかあるけど、子供ができるまでも全部で何本かくらいだったと思う。子供ができてからは、ますます時間がなくなり観に行けなくなった。子供ができてから初めての結婚記念日は、子供を預けて『茄子アンダルシアの夏』を観た。確か1時間くらいの映画なので、子供を気兼ねなく、預ける時間内に観られる映画だったのだ。そのうち子供が学校に行っている間で、夫の仕事がない時間に、家でDVDを観ることがでてきた。『ニューシネマパラダイス』も、どうしても観てほしくて、夫に観せた。
 でも最近の夫は自分から「観に行きたい」と言い、出張先の中途半端な空き時間ができると一人で映画を観に行っているようだ。基本的に名画と呼ばれる物より自分の好みを優先し、楽しむタイプである。独身時代に大好きだった映画『ブルースブラザーズ』は、何度も何度も観たらしい。あれを二流、三流映画だと評する人もいるようだが、かなりのミュージシャンたちが出ており、ソウルフルで、家族愛をテーマにした素晴らしい映画だと私も思う。ただドタバタ感とおとぼけ感が二流感を高めてしまうのだ。警官たちがあふれ、パトカーがめちゃめちゃになる場面なんかは本当にバカバカしくて可笑しい。
 二流なのかどうなのかわからないが、いわゆる「名作」ではないのかもしれないけど、私も『ビバリーヒルズコップ2』が好きで、ビデオを何度も観ているだけでは飽き足らず、それを録音して、通学の行き帰りに何度も何度もイヤホンで聴いていた頃があった。私もここに書いてきたように、映画は好きな方である。大学生の時間のある時期は兄の影響もあり、映画三昧であった。でも私は家でも良いってタイプである。名画も好きだけど、大作は疲れるし人が死ぬのは悲しいからいやだ。だから名画とか名作とか関係なく、自分が観たい映画、穏やかな映画が好き。昨年の一番は『はじまりのうた』だったし、今年は『オデッセイ』が良かった。これを書いている時点でまだ3月なので「今年一番」かどうかを判断するには早いけど。気分よくなる映画が好きだ。とは言っても、こんだけ書いたくせに『マイ・ガール』はやっぱり私にとってのベストなのだ。
 まあそんなわけで、すっかり映画好きな夫婦となりました。二人の共通の話題は、これで音楽、お笑いに並び、映画もある。気持ちが通じ合わなかったり、細かな好みは違ったりとかもあるが、こういった文化的な話ができるのは恵まれていると思う。割引される55歳やシニアになるのが、もはや映画のおかげで楽しみです。