映画のサントラが好きである。
 これは昔からなのだ。幼い6歳頃だったか、「スターウオーズ」や「グリース」を観に行った後、父がサウンドトラックレコードを買って帰ってきた。聴いていると、映画で出てくる場面が克明に思い出され、とても面白く感じた。父も何度も聴いていたし、私も何度聴いてもその曲がかかっていた場面を思い出して、良い気分がした。
 帰国後、長い間、映画を観に行かなかった。正確に言えば、以前書いたこともあるが、アニメ映画なら一度、従妹の家族に連れられて観に行った。でも「スターウオーズ」や「グリース」、「スーパーマン」を5歳やそこらで観に行ってしまったら、アニメがどうにも楽しめなかった。まだ精神的に幼稚だったからこそ、アニメなんて子供だましだと思ってしまったのだ。
 その後、中学生になってからちょくちょく映画を観るようになった。当たり前だと言わんばかりに、サウンドトラックを買った。いや、お小遣いが惜しかったので、借りていたっけな。それをテープに録音して聴きまくっていた。「サンタクロース」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「摩天楼はバラ色に」「ウィロー」「フットルース」「ダーティーダンシング(2も)」などが、中学高校に主に聴いたサントラかな。あっその前に、父が買ってきた「フラッシュダンス」も、何度も聴いた。
 ヴォーカル、コーラスのない楽器だけの曲も結構あるのだが、それもまたあの場面、この場面と思い出して、気分がその時に戻る。
 昨年は「はじまりのうた」のサントラを聴きこんだ。そして、今回は「オデッセイ」。これが二枚あって、二枚目は、すべて楽曲である。二枚目は「はて。この曲はかかっていた気がするけど、どの場面だっけ」となってしまうので、タイトルを見て、ああこの場面かなどと楽しめる。セリフやそれを観た時の自分の気持ち。一枚目はディスコミュージックがほとんど。アバの「waterloo」は、意味を調べて改めて面白い曲なのだと知った。
 いずれにしても、場面は克明に思い出せる。映画で流れるまで特に意味をなさなかった、ただの懐かしいディスコミュージックが、色々な場面を思い起こさせるようになった。
 そして、特に最後の「The Martian Score Suite」は、オーケストラが感動的で好きだ。曲の盛り上がりで、マーク・ワトニーの、火星から飛び出すまでの旅の表情を思い出す。彼が何度も「死んでしまうかも」という絶望的な気持ちを落ち着かせて長い長い間を過ごしてきた火星での暮らしを象徴していた旅であった。自分の気持ちに深く介入しないようにし、ただ淡々と業務をこなし、寝て起きて、そして最後には飼料のようにグズグズになったジャガイモを食べる。ちょっと胸がキュッと締め付けられるようなシーンである。それでも決してお涙頂戴なんかにはならない。ここで泣いて、ここで感動して、なんていうわかりやすい見せつけるシーンはないのだ。最後の計画に取り掛かる時に「waterloo」がかかる。リスクが高すぎる負け戦。地球上の皆も心配しながら、宇宙船アレスに乗っているクルーも心配しながら、その時は過ぎて行く。
 ちなみに、「Love Train」がかかる場面も好きだ。映画が終わってエピローグである。