『アラルエン戦記』を読んでいて、きっとこの先も、主人公たちは無事なのだろうとか予測できるし、12巻まで出ていることを知っているため、どうにかなってしまうはずがないと、つまらないことを思ってしまう。「全員」が無事なのかはわからないので、ちょっとパラパラ最後の方を見て皆の名前を確認なんかしちゃって、作者の気持ちなんか考えていない私なのだ。それじゃあストーリーがつまらないだろうとかも言われそうだ。
 ところが、わかっていても!耳障りなほどに自分の鼓動が聞こえるくらい、ドキドキしちゃうのだ。『アラルエン戦記』を書いたジョン・フラナガンはスゴイぞ。この登場人物は大丈夫と思っているのに、耳から心臓のバクバク音が聞こえる。この場面をどうやって切り抜けるのか、「大丈夫だから」と一生懸命自分に言い聞かせても、どうしても心臓がバクバクと鳴って緊張状態になるのがわかる。こればっかりはコントロールしようにもできないのだ。この場面はどうなるのか、どのように切り抜けるのか、綿密に立てたあの作戦は、どの程度うまく済ませることができるのか、といちいちハラハラする。
 主要じゃないけど、愛すべき人物たちが出てきた時も、この人たちはどうなってしまうのかとドキドキハラハラなのである。又、先にも書いたように、描写が非常に繊細、詳細に書かれているのである。それを丹念に読むと、映画のように映像で見ているかのように思い浮かぶ。これでまたドキドキハラハラは、より一層増す。
 6巻を読み終えた時、興奮冷めやらなかったが、疲労も相当なものでした。いつの間にか肩に力が入っていたと思われ、肩から首はガチガチにこっており、目の奥は頭痛がした。こんなにも夢中になってしまうなんて。5巻を読み終えて寝た時も、夜更かししたために6巻を読みながら時々ウトウトした時も夢には、本の内容の続きやその場面が出てきてしまった。約二日間、私の頭の中は『アラルエン戦記』でいっぱいだったのだ。ウィルは大丈夫かとか、どうやってこの状況を打破するのかとか、この場面はどうやって切り抜けるのかとか。
 この先、少なくとも12巻までは出ているわけだから、こんな読み方をしていては、体がもたない。実はこの『アラルエン戦記』、途中で切り上げやすいように書かれていると思っている。2〜4巻を二度目にゆっくり読んだ時、つくづくそう思った。大きく何章かに分けてあるし、その中でもさらに細かく場面ごとに区切られている。1巻の時は、それをありがたく思って、場面が変わる毎に休むことができた。「続きはここからまた後で〜」てな具合に。でも2巻からはすっかり翻弄されてしまった。二度目ゆっくり読む時にありがたい区切りだと思ったのだが、5巻に入るとまた必死になってしまった。とは言え、2巻〜4巻ほどスピーディーに読まないで言葉をかみしめて場面を思い浮かべながら読むようには気を付けた。それでも少なくとも夜更かしはやめなくちゃ。
 ちなみに5〜6巻は、ほんの少し、淡〜いラブロマンス的な部分もあって、若いって良いなあとか年取ったおばさんのようなことを思ってしまった。まあそのものなんですが。
 早く7巻以降も和訳が出ないかと楽しみにしていた当時でした。