先日、運転していて、20年ぶりくらいに見ず知らずの人に、怒りを露わにしてしまった。家族に怒ることは、心を許しているからあるものの、見ず知らずの人に対しては、そんなに腹を立てない方だと思う。それぞれの事情があるのだろうと思ったり、いやーねーとか思いつつ、何か機嫌が悪くなるようなことがあるのかもしれないと思う。ゲームだってそうだ。下手なプレーをされても、自分もそういう時があったからとか、相手の最悪な状況を想像してみたりして、きっと何か事情があるのかもしれないとか思う。
 なのに、人生で三度目の「見ず知らずの他人にブチ切れる」ってやつをやってしまった。
 一度目は、高校生の時で、横断歩道を渡っている時に、自転車が左から来て私の前を行くか後ろを行くか迷っているようで、私もどうするのかと思い、迷っていると自転車の車輪が足にからまってきた。咄嗟に転びそうになり、横断歩道の真ん中で身の危険を感じたが、「すみません」と言うと「危ないやろが」とおばさんが言ってきた。そこで私はカッとなってしまい「危ないのはそっちでしょうが!!」とすごい形相だったと思う。周りの車の中の人たちがこっちを見ているのを感じ、私は怒りでわなわなと震えていた。しかし、興奮状態から一転、このおばさん、すごく怖い素性だったらどうしようと急に思い、そこから冷静になって無視して帰ってきた。怖かった。
 二度目は甲子園球場高校野球を観に行った時の事。準決勝だったか、混んでいたので、仕方なく外野に回ったが、そこはもっと混んでいて、入り口はどこも入れないほどの人波だった。父と一緒に行動していたが、「しょうがないね、帰ろうか」と話し合って、やはり「しょうがない、帰ろう」という人波に乗った。そこで後ろの人が背中をあからさまにグイグイ押してくるので、カッとしちゃったんですね。「押さなくたって良いやんか!危ないやんか!」とキッと振り返って言ったが、どの人かわからない。ムカムカしながら進んだ。
 今回は、車がすれ違えない程度の狭い道路で前方が詰まっていた(後で分かるが先頭はパトカーでした)。私もゆっくり車を走らせていたのだが、元々車間距離をそれなりに空ける方なので、後ろの車に何度もクラクションを鳴らされてうるさいばかりでなく、危ないので、「なんなのよ!」と振り返って怒鳴った。
 でも、約45年生きてきて、知らない人に怒鳴ったのはこの三度だけである。
 物心ついてからは、親や友人たちに怒りを露わにしたことも滅多になく、腹が立ってもグッとこらえてせいぜい機嫌が悪くなったり、物に当たったりするくらいだった。ところが息子ができてから、それまでの人生で怒った分を、あっという間に超えるくらい怒った。よくカーッと頭に血が昇っているのが自分でもわかったし、声も荒げた。怒鳴り声は外まで聞こえていたのではないだろうか。車の中で怒鳴ってしまったことも何度かある。夫や母に怒りをぶつけたことも何度かある。二人にはさすがに怒鳴ったことはないが。
 とにかく怒るということを息子に対して以外あまり向けてこなかったと思う。
 なのに、なんなのだろう、この三回は。あまりにも唐突に自分の沸点がやってくるので、ちょっと自分が怖くすらある。ちなみに一番最近も、怒鳴る寸前だった駐車場での出来事がある。大丈夫でしょうかね。知らない相手なのだから、本当に気をつけなくちゃー!