『オデッセイ』を観に行った。
 前評判を聞いていたし、何となくあらすじは知っていた。火星に取り残された主人公が脱出するまでジャガイモを育てたりして何とかしのぐということ。緊迫感のあるシーンでも息詰まる感じが少ないこと。ディスコミュージックがたくさんかかること。それくらい。
 映画のサントラは、夫が嬉しそうに観に行く前からCDを買っていて、車の中で何度も聴いた。懐かしかった。ほとんどの曲が、歌詞と映画の内容が一致していると聞いていた。
 最初に書くが、期待以上に、何度も心を動かされた素晴らしい映画だった。
 映画に出てくる宇宙飛行士やそれを支えるスタッフがとにかく素晴らしい。科学者、物理学者、工学者、技術者たち、NASAJPLで働く全スタッフ。ああいった所で働く人たちは、どのような面接官に、どのようにどういった点を見られて選ばれているのだろう。
 宇宙飛行士に関しては、漫画『宇宙兄弟』や、奥さんのことを書いた向井万起男の著書『君について行こう』で知識を少し得ていた。彼らがどのように選抜されていくか、又、どういったものが求められるか。漫画『宇宙兄弟』も、かなり事実に沿ったものであるようだ。それが随分忠実であったことは、向井万起男さんの著書や様々なドキュメンタリー番組でも知ることとなった。取材やインタビューをかなり重ねて描いたのだろうと思わせられた。宇宙飛行士は、人間的なことで言えば、自分たちに何が求められているかを察知する能力、客観的な物の見方、思考力、洞察力、判断力、知力、冷静さ、ストレスに耐えうる心の強さ、自己管理と自己コントロール、そして体力などが求められているようだ。あとは圧倒的な好奇心。総合的なバランスがそんなに良い人がいるのかと思うのだが、そういった人間的に優れた人たちが宇宙飛行士に選ばれる。漫画だけでなく様々な記事を読んだり、ドキュメンタリーを観たりしているだけで、彼らが大変バランスの取れた優秀な人間であることを感じ、尊敬の念を抱く。
 そして彼らの周りで彼らを支える人たちにもいつも感心させられる。国際宇宙ステーション(ISS)、ジェット推進研究所(JPL)、ジョンソン宇宙センター、アメリカ航空宇宙局(NASA)などで働いている人たちというのが、具体的にどういったことを任せられ、どこまでをそのスタッフがしているのか私は知らない。彼らもまた知力、思考力、想像力、判断力があり、冷静で多面的な物の考え方ができる印象である。宇宙飛行士と交信し、彼らの体調や精神状態、全体の様子をチェックし見守る姿は、一番よく見られる映像(ミッション・コントロール・センター)で、彼らの役割もとても重要だろう。さらに、宇宙船、宇宙空間で働く施設、居住区であるモジュール、どこかの惑星であれば探索車、実験用の物などを作る科学者や工学者とそれを形にする技術者。宇宙でのあらゆることに対応するために計算し尽す物理学者。彼らの知的好奇心だけでなく、宇宙の現場にいる飛行士たちの負担をいかに軽くするかを考え、彼らの身に何かあった時に咄嗟の判断力や知力を要求される。その場で、宇宙にある物だけで解決する方法を考え、すぐに実践する。彼らの総力を結集して、色々なことを打開していく様子は、今までに色々な番組で観られている。中でもNHKでやっていた『コズミックフロント』は、とても面白かった。