札幌に住んだ時、地元では当たり前にある「スープカレー」の存在を夫に教えてもらった。夫が大学生くらいの頃からあるスープカレー屋さんで、度々行ったと言う。私が札幌に住んでいた当時は、今ほどスープカレーが全国的にメジャーではなかったため、観光客もほとんどいなかったはず。曜日や時間を選べば、並ばずに店の中に入ることができた。
 特徴は、要するにカレーがルーというより、スープなのだ。そのままだけど。スープ皿にシャバシャバというか、ターメリックを中心にスパイスが入ったカレースープがあり、その中にピーマンやにんじん、茄子やジャガイモがかなりのサイズで、」ほぼ一切れずつゴロゴロと入っている。入っているというか、浸かっている。このスープの中に、横に添えてあるご飯を少しずつ入れながら食べるのが正しい、とこの前テレビでやっていたのを見て「正しいのか……」と静かにそれを受け入れてみたが、私は逆なのだ。夫が「別にどっちでもいいよ」と言うし、店内でも色々な食べ方の人がいるので構わないと思って、私はお皿に乗っているご飯に、スープカレーを少しずつかけながら食べている。そうやって食べている人も確かにいるが、夫はカレーの中にご飯を少しずつ入れているので、やはりそちらの方が正しいのだろうか。まあ良いや。
 とにかく、このスープカレーが私は大好きだ。めちゃめちゃ美味しい。市販のルーにはないスパイスの香りと味わいの深さがある。野菜の美味しさも感じられる。
 私はこのタイプのカレーが気に入り、夫と札幌市内にあるあちこちのスープカレー店に行った。クーポン券がチラシに出されると、すぐに試してみた。そこで知り、気に入ったのが、車で10分位の場所だっただろうか、歩くと遠いのだが、比較的近所に美味しいスープカレー店を見つけたのだ。そこに度々通うことになる。
 その後もチラシを見つけては「ここも美味しそうだよ」と試してみていた。
 そして、出産予定日間近なある日。その日もスープカレー店に行ってみた。時々お腹の張りが来ていたが、まだ9〜16分おきだったので、病院の方針から、初産は6〜7分おきになってから入院ということを守り、私は平気で外出していた。大通り公園駅周辺の地下をウロウロし、時々「イタタタ」とかお腹を抑えながら悠長に歩いていた。そしてスープカレーを食べた。でも、9〜16分おきではなく、実は7〜9分おきだったのではと後から思う。結局その日のうちに入院、0時過ぎて間もなく出産した。
 子供ができてから、母が手伝いに来てくれてとても助かったが、帰ってしまってからは赤ちゃんと向き合うことに息が詰まり、早く外に出たかった。自分で料理を作るのが億劫で外食もしたかった。そして子供が外出しても良い頃になると、最初の外食として、私は夫と近所のスープカレー屋さんに行ったのだ。寝ている息子を横に置いて、落ち着かなくでも美味しくて嬉しく食べた覚えがある。
 つまり、出産をはさんで最後の外食がカレー。最初の外食もカレーだったのだ。
 これを思い返した時に「私はカレーが好きなのか」と初めて自覚したのだ。そう、私はカレーが大好きなのだ!食べることが好きな私は、なんだかんだと好物はあるが、カレーはきっと一番好きなのだろう。