その後、抜糸も終えた。
 これが、予想外に恐ろしく痛かった。しかも一瞬じゃなかった。
 また何も考えずというか、抜糸なんて一瞬で終わり、痛くもなんともないだろうと思って行ったので、ぎゃーーーーー!!!痛いーーーーー!!!と、内心大騒ぎし、体も拒否反応。体が椅子の奥へ奥へと逃げようと力が入るので力を抜こうとするのだが、立て続けに痛みが激しく走るので大変だった。若い先生は「チクッとしますよ〜」「引っ張る感じがありますからね〜」と、触る度に言ってくれるのだが、主治医は遠慮なくガッガッ!と口に器具をつっこんではつまんで引っ張るので、泣きたいくらい痛かった。処置が終わって別の医師が「痛かったでしょう」とねぎらってくれたが「痛かったあ……ふはあああああ〜〜〜〜〜〜!」と、両手で口をしばらく覆っていた。「ゆすいでください」と言われた時には「血みどろに違いない」と思い、水をふくんでペッと出したら、全然血は出ていなかった。なんだよあんなに痛かったのに、血は一滴も出てないのかいと、なんだか不本意な気持ちでいた。
 主治医はまだ骨髄炎の再発が気になるからと、薬の必要性について説明してきたので、またちょこちょこ質問した。
 ああそれにしても痛かった。数時間痛みは続いて、糸取るだけでこんなに痛いのなら、抜歯は恐ろしいものだったのだろうと改めて思った。全身麻酔のありがたさを知るが、できるなら、ああいう手術は怖いので、全身麻酔とかそういう目に遭いたくないものだと思う。そして、抜糸による痛みが数時間続いて何故か腹を立てていたのだが、その後、びっくりするくらいそれまでの口の中の痛みは減った。今まで糸で引っ張られたりしていたのかな。舌が当たると痛いし、常にほっぺは痛かったのだが、その痛みがまだあるものの、とにかく激減である。感激である。その前からあったほっぺたのかゆみは増した。ふと気づくと、アゴやほっぺをポリポリと掻いていることが増えた。
 抜糸の後ようやく、鏡の中の自分の右下の歯茎を初めてまじまじ眺めた。上はよくわからないものの、下は、あきらかに盛り上がりがなくなっていた。あれー。こんなにぺしゃんこなものなんだ……。
 そうか。親知らずが奥にあったから、歯の奥が盛り上がっていたんだ……。知らなかった。へこんでいるように見える奥の歯茎を見ながら、初めて「スッキリしたなあ」と嬉しくなった。
 ここでまず一段落し、私はかかり付けの歯科医院と、口腔外科と両方に再び通い始めます。口腔外科は、骨髄炎の心配がなくなってから、行かなくて良くなる。
 今回の手術のきっかけとなったかかり付けの歯科だが、最初の方に書いたように丁寧で優しく厳しく、不当に通わされる感じもなく、良いのだが、やはり細かすぎるのではと思うくらいである。このくらいしないといけないのだろうと思うが、衛生士さんの中には、もう少し言い方があるだろうと思う人もいる。なんだかんだと言われながら、まだまだ歯科通いは続く。