「またがかゆい(笑)」と、日常でも夫に言わないようなことを書いた。導尿をしていたため、むずがゆくて気持ちが悪かったのだ。私はいつの間にパンツを脱がされちゃっていたのだろう。
 夫の、仕事のノートに「またがかゆい(笑)」というヨレヨレの字が残ってしまった。
 そのページは破っておいた方が良いと思う。
 導尿と言えば、また出産の時を思い出す。出産して何時間かした時に、導尿した。「おしっこしたい感覚ありますか?」と聞かれ「いえ、特にないです」と返事をした私の尿量は相当なものだった。念のためと言いながら、大きなビーカーを持つ看護師さん。そのビーカーを抱えながら、そばにいたもう一人の看護師さんと「おっ?!おっ!!止まらない!大丈夫か?」とか騒いでいた。観ると、その大きなビーカーからあふれそうで、その中におさまるかどうか、二人の看護師さんたちがハラハラしていて、三人で笑ってしまった。「いえ、特にないです」と返事した量じゃあない。
 今回は、夜になって管が外されるまで、あまり寝返りを打ってはいけないのかなと思い、じっとしていたのだが、お尻が痛くなった。ほんの気持ちだけ体を傾けてみたりして、頑張って一か所の負担を軽減しようと、ちょこちょこ工夫したがとにかくお尻が痛くなった。
 夫に、ペンで文字を書いてちょっとした気持ちを伝えていたが、左手な上に寝転んだままだと書きにくく、まだ疲れもあるので、何を書いているのか読んでみようとしてもまったくわからないことがあり、そのひょろひょろな字を見ると笑いがこみあげてきた。何度も「ファッファッファ」と声にならない声で笑っていると「何やら面白いらしい……」と、夫が困惑していた。
 手術後ハイだったのかもしれない。手術が終わり、緊張感から解放されたものだから、笑いたかったんでしょうね。このハイは、翌日の夕方くらいまで続きます。
 息子が当日お見舞いに来てくれた時も、「ファッファッファッファ」と何度も笑ってしまった。ようやく声が出た頃だったが、あまり聞き取れなかったらしく、息子が何度も聞き間違い、その聞き間違いが可笑しかったのだ。
 二人が並んで座っている間、何度か目を閉じると、息子が「眠いの?」と心配するので、「いや、多分手術で疲れてるんだろうから、目を閉じた方が休まるのかなあと思って」と説明したが、あれは多分眠かったのだ。その時は本当に「休まるから目を閉じた方が良いんだろう」と意識していたけど、目を閉じると時々ウトウトしたので、本当は眠かったのだろう。
 でも、まあまあ元気な気持ちもあったので、二人に「大丈夫だよー。結構元気だよー」とアピールしたかった。