さて、そうやって色々な人がいる八人部屋だったが、大部屋って色々な人がいるものだろうと思っていたので、眠れないながらもそれほど当初は苦痛を感じていなかった。
 それよりも、看護師さんたちに驚いた。
 出産の時から、入院という経験もなかったし、そもそも出産が初めての入院だったため、入院て、ああいうものだと思っていたのだが、そこはそうではなかった。
 マニュアルなのか、最初の説明は非常に丁寧で感じが良いのだが、一度にあれこれ言われるので、私みたいなタイプは覚えきれない。紙に書いてあることと違うことも言う。「ここは、この通りじゃなく、こういう風にして下さい」とか言われるので、紙を読んでも、その説明通りではなく、これは看護師さんが言ったようにするとか、紙の説明通りにするとか、ややこしくなっていった。手術の説明も、一枚の紙で渡されたが、手術や、その前後に伴う注意事項が、あちこちの紙に書いてあって、そこでも「ここは、紙の説明通りではない」という部分があった。あれやこれやと「ここはこうではない」とか「ここはこの通りにしなくても大丈夫」「ここはこの通りにして」とか言われると、混乱した。その時その時で、看護師さんも言ってくれるだろうと、出産入院の経験からもそう思った。
 ところが、そうではなかった。
 何を自分から働きかけるのか、どの場面で看護師さんを呼ぶのか、何をその時指示してくれるのか、自分で判断するのか、よくわからないまま入院生活は始まり、周りを見ながら動こうにも、周りは入院した時期も違えば症状も違う。これはどうすれば良いの?とよくわからない。最初のうち、カウンターであるナースステーションに度々行って、その都度どうするのか聞いた。看護師さんによって言うことも違い、ますます戸惑った。連携もできている感じはしなかった。
 トイレもかなり遠くて、点滴の時にじっとしていてと言われたり、普通に動いた方が良いと言われたりなので、トイレにも気を使った。洗面所の場所も説明がなく、又そこを勝手に使って良いものかわからなかった。
 シャワーも時間だけ言うと、特に引継ぎもなければ、看護師さんからの連絡もなく、シャワー室の場所の説明もなく、どうすれば良いのかわからないまま時間が過ぎ、またナースステーションに行って聞くと、戸惑った様子で説明されたが、その説明も「えっこれはどうするの?」だらけで、たくさん質問する羽目になった。そして、シャワー室の汚さにちょっと引いた。こんなので、病気など感染しないのだろうかと不信感が芽生えた。出産入院した時の綺麗なシャワー室を思い出し、丁寧に洗ってくれていたんだと、改めて思った。
 手術前日は、まだ元気だからか、そうやって放っておかれていて、又私も仕方ないなと受け入れていたが、それにしても、元気なうちに色々と丁寧にその都度教えてほしいものである。手術前でとても不安に感じているのに、モヤモヤした気持ちが広がっていった。