親知らずは、生えなければそれで良い。てなもんではなく、その一つ手前の生えている歯を、横から虫歯にしたり、今回の私のように歯茎を腫らしたり、他の生えている歯を押して痛みを感じさせたりと、随分悪さをするらしい。
 よって。
 見えていない親知らずを抜くべし!!
 と知ったし、そう言われた。
 そして、腕が良いと評判のその歯医者さんも「ここではできないので、口腔外科に行ってください。」と言ってきた。
口腔「外科」。……口腔「外科」。
何度も頭の中で繰り返した。……。外科なんだな。切るんだな。切って出すんだな。
 ……ぎゃーーー。
 今度は、頭の中で「怖い」「怖い」が渦巻きだした。
 ワタクシ、出産の時も「そんなの何日か経てば絶対に生まれるんだから」と、全然恐怖心を持っていなかったタイプです。そのせいで「こんなはずじゃなかった」と痛みに大騒ぎもしましたが。とにかく、必ず済むことなのにそれを案じて恐怖心を持つのはバカバカしいと思う方である。なのにである。歯茎を切って、歯を取り出すという行為が恐ろしい。そもそも出産したら、大変だけどこの上なく愛おしく可愛い存在のものが出てくる。歯茎を切っても、ちっとも可愛いものなんか出てきやしない。
 何日かして、紹介状を持って大きな病院の口腔外科に行った。すると「20〜30分で抜歯し、説明も入れて全部で40分くらいです。次の日も消毒が必要なので、日を二日取って下さいね。その後かなり腫れるので、何日間かは外出できないと思います。」と言うではないか。その後もかなり腫れるので何日間か出られないということは、事前に知っていたけど……えっ。20〜30分で終わるの?なあーーんだ。
 と安堵しつつ、でもやっぱり怖いからちょっと憂うつな気持ちを抱えながら帰った。
 ところが。……話は、ここからすぐ抜歯の日には行かない。
帰宅後間もなく、電話がかかってきた。病院の口腔外科から、「CT撮りに来て下さい。」とのことだ。
 「それによっては、抜歯がなくなるのか?」と今思えば何故そう思ったのか、自分でもよくわからないのだが、そんな淡い期待を抱いてしまった。聞いてみたけど、受付業務のみなのでわからないと主張する。まあいいや、抜かなくても良いかも〜。
 と思って数日経ったが、何で抜かなくて良いなんて思ったんだとすぐに気づいた。だって下の歯であるべき歯が下に向かって生えているんだもの。そのままで良いわけがないし、横向きはあっても下向きだなんてどう考えても普通ではない。色々読んできて「抜かなければいけない」と知ったではないか。
 そうだよな。手術に携わる人が、どの程度「大変か」を知るためにCTを撮るんだな。