夫の通う、評判の良い歯科は指導がしっかりしているものの、歯科衛生士の皆さん、知識もしっかりあって、説明も丁寧、歯磨き指導も優しかった。口や歯の扱いも乱暴じゃなかった。やっぱりあの衛生士はイケズな女だったのだ!そこの歯科に行く前は「歯医者さんのお姉さんて怖いでしょ」と偏見のかたまりだったのを、夫が笑っていたのが何故かわかった。そこの歯科はそんなにツンケンした人もいないし、人当たりの優しい人や厳しい人は多少差があるものの、全体にソフトで、誰も意地悪な言い方をしない。
 私の歯磨きの点数は、最初は悪くなかった。夫が「最初30何点かだった」と言っていたのを聞いて「そんなに厳しく低く言われるのか」と思って怯えていたら、20数パーセントと書いてあったのを「これが点数なのだろうか?」と、ショックを受けた。その紙を夫に見られそうになり、反射的に引っ込め、クシャクシャと丸めて捨てた。しかし、そこのパーセントは、良くないところであったと後から聞いて「わあ、取っておけば良かった!!」と後悔した。ここで初めて、以前のイケズ女に、いや歯科衛生士のお姉さんにちょっとだけ感謝する気が起きた。でもそこの歯科で、それだけ歯を磨けていると評価してくれたのは、そのお姉さんが最初で最後で。それ以降は、グンと点数が低くなってしまった。
 さて、歯茎の膿の治療、歯磨き指導、歯石取りなどを終えて、小さな虫歯の治療を始め継続中なのだが、なによりも大きな事は、親知らずである。
歯茎の膿の治療をしながら「歯茎の奥が痛いので、親知らずでしょうか。」と言ってみた。レントゲンも撮ってみた。すると、親知らずが以前撮った時より大きくなっていることがわかった。上の両側なんてそのまま生えてきそうである。それにしても斜めだけど。歯がたくさん生えているので窮屈そうだ。
 そして、問題はそういったことではなかった。歯医者さんがうなったのは、まだ抜いていない右下の親知らずであった。初めて見た時には目を疑った。
 よく読んでくださいね。右「下」の歯茎です。「下」に向かって生えているのです。
 ……意味がわからないでしょう?
 ネットで調べてみたけど、横向きに生えている人は結構いた。私の左下の親知らずのように、斜めに「生えている」から抜かなければいけない人ももちろんたくさんいた。でも、私の右下は、生えてもいない。歯茎の中で下に向かっている。厳密に言えば、「斜め」だけど、やっぱり斜め「下」なのだ。
 私の勝手な見解だが、下のあごの両端って少し上に向かってますよね。多分そのギリギリ上の方から生えてきたのではないだろうか。私のあごは残念ながら狭いのだ。「よっしゃスペースみっけ!」と、そこからにょきにょき伸びてきたに違いない。
 「この歯が急に曲がり、上に向かって生えていく、ということはない」と言われ、そりゃそうだろうと思いつつ、この、奥へ奥へ行く歯にちょっとした恐怖を覚えた。このまま下に向かって行ったらどうなってしまうのか。