次に歯医者にお世話になったのは、妊娠中である。
 「妊娠したら歯医者さんに行きましょう」
 って、何かに書いてあったから、そういうものなのかと思って行ってみた。赤ちゃんが生まれたら、虫歯になっても治療に行くどころじゃないですよ〜ってな内容だったと思う。妊娠中や授乳中にひどくなってから行っても、麻酔を打つことができないから大変ですよ〜……だったかな。とにかく、ビビりな私は早い段階で歯医者に行った。
 その時は多分虫歯はなかった。いや、忘れましたが。とにかく印象が強かったのは、歯磨きの徹底指導であった。お姉さんが厳しかった。自分より若いと思われる歯科衛生士さんに、「縦に!」「角度を変えて!」「奥を磨く時には……」などとうるさく言われ、痛いのをグッとこらえると表情からわかるのか「痛いでしょう?それは歯茎が悪くなってるからですよ!」って、今思えば、なんだよアンタもっと違う言い方ややり方があるだろうと、歯医者を変えているかもしれない。でもそこの院長さん(おばさまでした)、感じが良かったんです。ただ、その人は最初のチェックだけで、いつもの「歯磨き指導」程度だとその女医さんは来てくれないようだった。そして若いイケズな女衛生士が担当になってしまったのだ。毎回、「今日は誰かな」と思うが、大抵その厳しいイケズな衛生士だった。歯間ブラシもその時に教わった。一番奥の歯とさらに奥の歯茎の間も歯間ブラシを当てろと言われたものだった。いつもずいぶん強く命令されて、毎回何だか嫌な気持ちで帰った。まあ次行く時にはすっかり気持ちが新たになっているんだけど。私の「歯科」に対する抵抗のなさったらなんだろう。……と、当時は思っていた。今は違いますよ。「いやだけど、何も考えないようにして行く!」という風に意識的です。
 まあおかげで、妊娠中も出産後も、当分歯医者のお世話にならずに済んだ。
 息子への歯磨きは、今思えば、結構スパルタだった。別にイケズなお姉さんに対する復讐の思いからではない。乳幼児への虫歯に対して、世の中が厳しくなったのだ。乳歯から永久歯に生え変わったら、虫歯はなくなるのではなく、乳歯からの虫歯菌は、永久歯に生え変わっても残るとわかっていたので、赤ちゃんの頃から歯磨きの習慣を!!と声高に言われていた。私も洗脳され、いや、正しい知識のはずだが、息子がいやがっても、夫と二人で押さえつけて、泣きわめく息子の口の中を磨いた。ごめんね、でも、これは良かったみたい。息子は中学生になっても、虫歯一本なく育ちました。本人それほど歯磨きに熱心じゃないんですがね。幼い頃からの心がけは効果的だったようだ。
 息子がある程度大きくなると、年に一回、近くの歯医者に行き、簡単に掃除をしてもらった。ついでに私も。掃除してもらうと、歯がツルツルになり、気持ちが良い。
 しかし歯医者に行く日に、歯磨きを忘れてしまい、歯科の洗面所で歯を磨かせてもらったことがある。朝出かけるまでの支度がイレギュラーになると、歯磨きを忘れてしまうことがあるのだが、滅多にないことだし、歯医者に行くのに歯磨きを忘れるなんて、なかなかの衝撃だった。