麺類が好きである。
 大学生くらいの頃だったか、母親が「私はうどんが好きなのよねえ」としみじみ言ったのを聞いた覚えがある。それを何度か聞いて、当時の私はそうでもないなあと思っていた。
 以前も書いたが、若い頃はパスタが大好きだった。特にニンニクの効いた、トマトソースベースのパスタが大好きであった。長い間、それが一番好きだった。こんなに好みが変わらないと、「何が食べたい?」と聞かれた時に、いつも「パスタ」という返答だと飽きられないかと周りの気持ちが心配になったくらい、そのタイプのパスタが好きだった。
 夫と一時期、そばにハマったこともある。厳密に言えば、夫がハマった。札幌のあらゆるそば屋について行く。一緒になって行くと、こちらも色々と知ることができて楽しんでしまう。色々なそばを味わった。同じ蕎麦でもこんなに違うものなのかと驚いた。そば粉のにおいが強く、太くて力強いもの、香りは良いけど白くて細いもの、めんつゆも店によってしょっぱかったり甘かったり、意外と全てが好みのものに出会えないのだった。
 ラーメンも美味しい店を求めてあちこち食べ歩いた。関西に住んでいた時は、しょうゆラーメンが美味しかったと記憶しているが、札幌では味噌ラーメンが美味しかった。太くてちぢれた麺も口触りが良くて、大好きだ。九州の豚骨ラーメンと出会った時も「わあ、こんなスタイルのラーメンがあるんだー!」という驚きと共に、スープのおいしさとトッピングの楽しさに夢中になった。こちらではまた違うラーメンが主流だが、香りの強めなラーメンが相変わらず好きである。
 そのうち、さぬきうどんも食べに行こうと計画していたら、妊娠した。でも予定していた香川県に行った。妊娠していたために、味覚が変化したり、一時食べられない物が増えたりしたが、うどんは大丈夫だった。たくさん食べた。そして後に全国各地、さぬきうどんのチェーン店ができる。割と美味しいので度々行くようになる。さらに妊娠していた時に、パスタの好みが変わった。和風味に目覚める。出産後も、和風味のパスタの美味しさを求めるようになった。年齢が上がるにつれ、トマトソースベースのパスタが重たく感じることも増えていった。そして、母と同じようにうどんが大好きになった。ただし。焼きそばも大好きである。好きな食べ物トップ10に入れても良い。いやトップ5に入れても良い。それくらい焼きそばも大好きである。
 で、今回言いたいのは、こんなに麺類が好きなのに、ぶよぶよした麺も実は好きだということを打ち明けたい。普段はパスタのアルデンテ、そばのコシ、うどんのコシ、そういった歯ごたえを楽しみ、丁度良い具合の物を「美味しい!」と思って食べている。もしレストランで、ぶよぶよのを出されたら腹が立つくらいである。ところが、少々ぶよついている麺が食べたいこともある。何故かはわからない。カップ麺についてもそう。ちょっと時間が過ぎて膨張したくらいが好きなのだ。考えてみたが、多分麺のツルツルした口触りと、長いところを楽しめたら良いらしい。ご飯だとブツブツ切れちゃって細かくて糖分が多く感じてしまう。以前、鍋料理を食べている時にそうめんを茹ですぎて、ぶつぶつと切れてしまうことがあったが、その時はさすがにブヨブヨ過ぎていやだった。