『インサイド・ヘッド』を観に行った。主人公は女の子だし、そろそろアニメーションも息子には幼く感じて嫌がるかなと思ったが、楽しみにしてくれていた。
 感情についての話なので、心理学的にも、思春期を迎えた息子の感情に訴えかけてくれるかなと期待していたが、まさにその通りであった。その効果は想像を超えて、滅多に「面白かったね」と自分からは言わない息子が、帰宅してからも数日経ってからも何度も「面白かったよね〜」と言ってきた。
 脳の仕組みについても、アニメ化してわかりやすいばかりでなく、本当にこうやって心の中に色々と感情さんたちが右往左往しているとしたら面白いなあと客観的にもなれる。司令塔があるところなんかリアルなのだが、記憶や思い出のボールがあるという設定が面白い。必要ないと思う記憶、それが細かい歴史の人物だったりして、確かにテストに出る時や教科書で読んだ時の短期記憶なんかがあるので、それを「このくらい記憶に残しておけば他は良いでしょ」てな感じで選別する場面も面白かった。
 自分にとって大事なものが島になっていて、それを刺激されると活発に動くところも面白い。イマジネーションランドだっけな、想像上の物が次々とある場所も面白いし、夢を作る場所があるのも面白い。全部、脳にある部分で、それを笑いを交えながら上手に紹介していく。最後も感情が複雑化することや、思春期が言葉ではできない感情であることを、ごくごく軽く、一目でわかるように簡単に映像化していて、それだけで納得できて面白い。
 さて、この映画の中でもっとも大事で、監督が伝えたいことは「喜びと悲しみ」の存在である。子育てしている親にどれほど響くかわからないが、心理学に関心のない人も、是非この映画を観て、究極に簡略化しわかりやすく描いた「カナシミちゃん」の存在をよくよく感じてほしい。「悲しみをしっかり感じてこそ人は癒されて、心から喜びを感じる」ということ。
 何度も書いているが、泣くことや怒ること、辛がることや愚痴、嫉妬の気持ちも、決して「良くない」気持ちではない。それをどう表現するかがすごく大事なのだ。中でも泣くことや怒ることは、できるだけ直接的にその気持ちを出すことが望ましい。抑え込んだ結果、憎悪となったり、人を傷つけたりするため、なるべく早い段階で許される人に許される範囲内で出してしまう方が良い。そうして初めて心からの感情が動き、気持ちが豊かになる。自分の欲求や好奇心も正常に伸び伸びと育つ。そういう気持ちと向き合い、表現することは勇気である。そしてその勇気を出すには、その人自身の性格と、臆病であればやはり大人の力が必要だろう。
 そういったことをこの映画は、人の心とか自分の気持ちとか脳とか面倒くさい、と思っている人にもわかりやすく教えてくれた、明るく楽しい映画である。
 息子は、ビンボンが自分を犠牲にしたけど、心から人の幸せを喜んでいた場面(と、後から息子がそのように説明してくれました)で、久しぶりにハフハフ言いながら泣いていました。私はその場面と、主人公の女の子が抱え込んでいた思いを吐き出す場面で涙がこぼれ落ちました。感情がはじける場面というのは、心を打つものですね。