その後、ユニバーサルスタジオジャパンに行ったが、やはり乗れる物、観る物が限られていて、幼い息子が喜んでいる様子は嬉しかったが、私自身はそれほど楽しまなかった。しかし、舞台裏のコースを走る電車に乗った時に、案内役のお兄さんに「このことは内緒だよ」と言われたことを、息子が長い間引きずっていたのが、可愛かった。家に戻ってからも、「内緒のこと、観てきたね」と、車の中でさえヒソヒソ声で話しかけてくるのだった。
 それからしばらく、ディズニーランドは、我が家の話題からは遠ざかっていった。他に行く所もあるものだし。何と言ってもお金かかるしねえ。
 息子が親と行きたがらなくなる前に、一度行っておきたいと思ったが、「別に行かなくて良い」とか言われて、意気消沈していた。
 そこへ息子への無料券である。塾で行った全国テストの成績により、ディズニーランドの券がもらえたのだ。最近の塾はあれこれと考えますなあ。その券には、中学に入るまで使えるとのことで、じゃあ入試終わったら行こうということになった。券だけでも高いからね。ありがたく使わせてもらわないともったいない。本当は、平日に行きたかった。比較的人が少ないだろうし。でも、息子は「学校休んで行くのは楽しみきれなくていやだ」と、罪悪感を訴えた。仕方ないから、高い春休み期間に行くことにした。期限ギリギリである。それでも、春休みの中で最も高くなる時期を外して行こうと計画を立てた。小学校の卒業式が終わり、中学のオリエンテーションがある間の日を縫って。今回は、前回行けなかったディズニーシーの方に行ってみることにした。
 少しずつ息子も楽しみにしてくれたようだった。買って置いていたガイドブックを読み、「これに乗りたいなあ」とか言いだした。
 私は服装をめちゃくちゃ考えた。一日目は、夫が東京で仕事があるから、街中に出るし、そこで待ち合わせて晩御飯を食べる。ちょっとはオシャレをしたい。ここではオシャレをすると浮いてしまうので、関西に住んでいた頃の「割とちゃんとした服装」すらできない。こっぱずかしくなるくらいだ。だから、こんな時くらいちょっとはオシャレを楽しみたい。ここより暖かいだろうからあまり着込んでいっても暑いだろうし、汗もうっとうしく感じる、なかなか着る服に困る時期である。三日目は帰るのみなので、こちらに戻ってくる時に寒く感じるだろうから、ちょっと厚着にしよう。とは言え、ホテルのレストランで朝食バイキングがあるから、相応の適当な恰好というものがある。
 問題は、二日目である。たくさん歩き回るだろうから、歩きやすい靴が良い。でもちょっとオシャレなのが良いなあ。色々思いめぐらせて、靴を買いに出た。そこで気に入ったのを熱心に試着していると、ふと家にあったのと同じ感じだなあと気づいたので、なんだよ〜とかブツブツ言いながらあきらめた。代わりに、スカーフを買うことにした。すごく素敵なスカーフが、靴の予算より安く買えて非常に満足した。薄手の春用ニットを着て、毛の混じったカーディガンを着れば、少々寒くても春用コートで済むだろう。これにスカーフを合わせたら、ちょっと色が違う地味でいながら可愛い靴でも合うはずだ。
 この決定に、とても満足を感じながら、服装も決まった。