帰国後、しばらくはディズニーランドに行きたいという欲がなかった。
 子供ができてから、子供と一緒に行きたいと段々思い始めた。いつになったら連れて行けるかなとよく考えた。自分が5〜6歳の頃に行って、かろうじてその記憶があるので、あまり幼い頃に連れて行っても、覚えてもらっていないだろうから、一番幼くてもその年頃に連れて行こうと考えた。何と言っても住んでいる所が遠いし。
 そして息子が年長さんになる頃に、その機会はやってきた。プーさんはわかるので、そのDVDと、トイストーリーのDVDを観て、少し予備知識を持ってもらい、行くことに。
 グズグズの激しかった息子なので、あまり長くは待たせられないと思い、プーさんとトイストーリーのアトラクション以外は、まったく期待せず、その二つさえ乗れたら良いと考えていた。
 しかし、それ以前にまずゲートをくぐってから、息子が急に泣き出した。大泣きであった。原因不明である。周りの雰囲気に圧倒されたのかもしれない。今息子にその話をしても「へえ、何で?(僕は泣いたの?)」と逆に聞かれる。こっちが聞きたい。
 大泣きした息子をなだめるために、入り口近くで座り込み、抱っこしてなだめている間、情けなくなった。こんな所でも、この子は親にはわからない理由で大泣きするのかと思い、流れていく人波を眺めながら、自分も涙が出そうになった。その後も彼の機嫌は直らなかった。息子の機嫌が直ったのは、ポップコーンを買ってからである。昔から食べ物でゴキゲンになれる息子である。しかもその容器がプーさんの絵が描かれていて、とても可愛かった。息子はたちまち機嫌を直し、おとなしくプーさんの列に並んだ。その間に、昼のパレードが偶然すぐ横を通り、その音楽と胸に響く大音量で、まだ心を動かされた。
 プーさんのアトラクションでは、息子は声も出ないほど圧倒されていた。そういう乗り物に乗ったのが初めてだったのだ。怖いとか言いながら結構楽しんでいたので良かった。乗り終えると、お土産店に自動的に行くよう流れができていて、息子にお土産を買ってやることにした。数字には強い息子だったので、「¥1000以内で選んで」と指示すると、可愛いカンガとルーのぬいぐるみを選んだ。息子が初めて自分で見つけ出し、指定された金額内で買ったお土産である。息子の好きな顔をしたぬいぐるみだった。今も大事にしている。
 それから、イッツ・ア・スモールワールドやダンボなど、幼い子供なら乗れるような穏やかな乗り物を選んで乗った。待ち時間も少ない。
 そばのモノレールやホテルまでのバスも色々と工夫がされていて、朝から晩まで夢の世界だった。
 帰りに、「ああまだ帰りたくないなあ。もう半日でも良いから遊べないものか」と名残惜しく切なくなったが、一番「帰りたくない〜」とグズグズ言っていたのは、夫であった。そうだった。夫はこういう時、目いっぱい楽しむタイプだった。仕事から離れて、現実逃避できる楽しい空間なのだろう。