チェック項目からと、自らの体験を書いた著者たちのダンナさんの特徴の中からこれは全員当てはまりそうだなあと言えることは幾つかある。本来、項目は幾つもあるのだが、体験談を読み、友人たちの話を聞いていて、例外なく全員に共通する点が幾つかある。
 一つは、人を尊重していないということ。要するに軽んじている。相手の意見を聞かないから話し合いにもならない。自分が譲るところは何一つないと思っている。だから謝りもしない。謝るとしたらそれは相手のことを思ってではなく、自分の得のためにである。いつだって正しければ良いといった具合だ。いくら正しくたって相手を傷つけたら謝ること。これは、我が息子でも幼児期からできることだ。夫婦間でそうやって話しているし、息子にもそれを実行し、実行させている。私にとっては信頼のおける人間関係を築く上で当たり前のことなのだが、できない人もいる。相手を尊重などしないから、子供も親を下に見るようになる。親を下に見るようになると、連鎖する場合がある。自分のパートナーや子供に対して。「俺様」になるわけである。この連鎖が怖いので、くれぐれも親側は注意してほしいと思うのだが、そんな忠告なんか効き目はない。だって自分は正しいと思っているわけだから。
 子供にとって、親のことを、苛立ってこんな程度だったのかと思う時期はあるだろうが、もう片方の親やそこに居合わせた大人は、周りの人たちは親がどういう人であるかを知っているのなら注意して然るべきだ。子供の発言は一人の人間として尊重されるべきだが、人を下に見るような発言は注意しなければいけない。そうやって子供は大人になっていく。親の思いを感じ、知って、思いやれるようになっていくはずである。娘や息子が父親を小馬鹿にした時、母親は子供を叱らなくてはいけない。娘や息子が母親を小馬鹿にした時、父親は母親の味方でなければならない。特に父親は、父性の役割を担うことが多いので、しっかり言って聞かせることは大事だ。父親でなくても良いし、立場が逆転しても良いことを前提に、核が「父性」というものの役割とは、しつけなのである。しつけとは、日常の習慣、ルールを身に着けさせることである。感情的に怒る必要はなく、厳しい態度で臨んだとしても、決して萎縮させることではない。
 モラル・ハラスメントを受けた人の中に、離婚して最初に必死になったことは、子供たちが親を小馬鹿にする態度を改めたことだという例もあるそうだ。そういう子供が親になった時、パートナーや子供に対してそれを向けることがあるからである。連鎖は、虐待と同じ構造なのだ。
 もう一つ、共通するチェック項目を挙げよう。家事や子供へのしつけなど、自分の思い通りではないと、機嫌の悪さが突然やってくるそうだ。そのまま何か月でも平気で口を聞かない人も多い。話し合いなど当然ないし、察しろ、わかるまでこらしめてやろうというのがその目的らしい。機嫌の悪さを態度だけで知らせる。そこに人と人との交流はない。家事や子供に対するしつけに関して言わせてもらえば、不満ならば自分でやったらどうだと言いたいが、子供に関しては、彼らはしつけ=コントロールするものだという認識なのでこれまた厄介である。