最初に「そのダンナさんはモラル・ハラスメントというのでは」と思って一冊本を買ったが、実はまだピンと来ていなかった。親子関係について勉強していた私には、どちらかと言えば、「機能不全家族」という方がピッタリきた。友達自身もアダルト・チルドレンの特徴を持っていることを乗り越えられていないという印象だった。
 アダルト・チルドレンは、世にはびこっている。私もその仲間だった。気が付いてからやっと私に反抗期がやってきて、乗り越えるのに何年もかかった。その間は、どうしても親を傷つける言葉をかけてしまうし、自分の気持ちもズタズタ。罪悪感もつきまとった。ある程度乗り越えられたと感じたのは、自分の怒りの感情と普段接している時の思いを切り離し、自分と親とは違うのだと精神的に距離を保てるようになってからである。自分の怒りとか甘えとかそういった気持ちを主張して親に受け入れてもらえて、思いやりの気持ちが心から芽生えた時に、初めて乗り越えられたと感じている。自分なりの納得の仕方をした後、気持ちは落ち着いていった。周りの友人や知り合いを見ても、アダルト・チルドレンは多い。見聞きしてつらいのは、本人が気づかずに、子供に影響が出ている時である。近い知り合いなら何とかしてやりたいと思うのだが、こちらが思えば思うほど、相手にはただの押し付けになるばかりなので、相談されない限り、余計なお世話だと自重する。友人関係を築いている間柄なら、相当な忍耐力が要るし、関係を続けて行くうえで困難なことである。
 話が少しそれてしまったが、そうやってモラル・ハラスメントの本を読み「こういう夫婦がいるのか。」と驚いたが、友人にそのことをすぐには言わなかったと記憶している。彼女がもしかしてそうなのかなと言ってきたので、そうかもしれないねと返事しただけだったように思う。そうであるかないかよりも彼女の心理状態の方が心配で、あれこれと言ってしまった。とは言え、彼女の親や兄弟、親戚の言うことを聞きながら加減はしていた。彼女は非常に傷つきヘトヘトになった精神状態で、ほどなく離婚した。
 そしてまた別の友人が、ダンナさんのことを相談してきた。やはり彼女ともかなり近しい関係なので、あれこれと率直に意見したが、彼女の「そこまでじゃない」という加減を見ながら、遠慮したり率直に言ったりと、右往左往。右往左往しながら、離婚した友人のことを思った。あそこの夫婦とはまた違うけど、どこか共通しているところがある。モヤモヤした私は、久しぶりに何となく以前買ったモラルハラスメントについての本を手に取った。その本に出てくる夫婦もまた少し違ったが、でもやはり共通している点がある。チェック項目もあるので、そのダンナさんを当てはめてみる。でも、人のダンナさんのことなんて、しょせんよくわからないのだ。友人たちの話を聞く限りはこうじゃないかなあという憶測だけである。ただどこかやっぱり共通している部分がある。「ここだ!」という文章ももちろんある。同じこと言っているなあ。同じことをしているなあ。っていう部分もある。でも程度の差もありそうだし、一概に言えないという部分も多々。ただそういう「同じこと」以外に共通している部分がなんとなくあって、それが徐々に浮かび上がってきそうだった。