卒業式のことを書いた直後だが、今度は中学の入学式だ。
 中学の制服は、イマドキ感の高いジャケットである。息子は着慣れないシャツを着て、ズボンを履き、ベルトをしめて、簡易のネクタイを付け、そしてまだまだ長すぎてチュニックみたいなほどの丈のジャケットを着る。
 小学校とは雰囲気が違い、息子と似たタイプの子たちも今までよりは増えるだろうと思うと、私まで胸が高鳴った。楽しみだとばかり思っていたのだが、式の最中、入場してきた息子を見て、卒業式には感じなかった「わあ、大きくなったもんだなあ」という気持ちで胸がいっぱいになった。危うく見当外れなところで、涙を流すところであった。息子の身長は、真ん中より少し前くらいなので、周りと比べると大きいということは全然ないのだが、中学校の制服に身を包み、胸を張って入場してくる様子は、私には充分胸に響いた。
 中高一貫校で、高校の入学式も同時にするのだが、高校は、同じ中学から上がってきた子たちの倍くらいの人数が入ってくる。中学一年生の子たちと高校一年生の子たち全員の名前が呼ばれる間、ものすごく長かった。私はこういう場でじっとしていることが苦手な方なので、できるだけ自分なりに対策を取った。全員の名前が呼ばれる間は、違うことを考えて気を紛らわせた。息子の名前が呼ばれて、なかなか良い声で返事をするんだなと感心し、その後あれやこれやと考えて、一通り考え終わったが、まだまだ名前を読み上げていた。長かった。校長先生や来賓の方々の祝辞も、ちゃんと内容を聴き、できるだけ内容をかみしめて、そうすることによって退屈をしのごうと頑張った。これは息子が試みている方法である。人の話をすぐ聞き逃す私にとって、なかなか良い方法なのだ。
 式が終わった瞬間、ブラスバンド部のシンバルが、バシャーン!!!と鳴った。ものすごくびっくりしたが、周りには肩をビクンとさせたり心臓を押さえたりしている保護者たちがいたので、皆もさぞかしビックリしたんだろう。寝ている人も起きろよっていうメッセージ性があったのではとすら思うくらいのでっかい音だった。ああビックリしたあ。
 生徒たちが退場した後、その場で役員決めがあり、席についてちょっとボンヤリしていると、進行していた人が「〜〜〜て下さい」と何やら指示している声が聞こえた。
 シマッタ!!!
 肝心なところを聞き逃してしまった。あんなに頑張って色々と話を聞いてきたのに。
 皆はそれを聞いて、サッと身支度をし、立ち上がっている。そうか、どこかへ行くんだな。昔からしている方法で、周りを見ながら何となく皆についていった。
 ついていくと、教室に着いた。なはは。子供たちの教室に行って下さいだったのか。
 息子は、教室に座っていた。皆きちんと座って緊張感があり、何となく大人っぽく感じる。先ほど息子を見て、立派になったなと感じただけあるなあと感慨深くなっていると。息子だけ椅子の背もたれの後ろに片腕を回している。態度が大きいんじゃないかとなんだかヒヤヒヤしていると、椅子を揺らし始めた。ちょっとちょっと。くつろぎ過ぎなんじゃないですか。と思う間もなく、息子は鼻の穴に指を突っ込んでいる。わーーー!!やめてえ〜〜。頭を抱えたくなった。息子はまだまだ無邪気過ぎる。