しかし、一つだけ、夫が好きなことに、どうしても首を突っ込めないことがある。
 プロレスである。
 これだけは違う。
 最初は何故なのかよくわからなかったが、最近だんだんわかってきた。
 まず、プロレスというものが、エンターテインメントの要素が強いものであるということを、やっと最近理解できてきた。ストーリーを作り、客を楽しませ、それを発揮する。舞台でも大げさな動きを見せて客を楽しませる。なるほどこうやって楽しませているのか、と知り、その楽しみ方も夫に教えてもらったようなものである。
 しかし、それでも首を突っ込んで面白がる気持ちになれない。何故なのか考えてみたが、一つには、髪の毛の長い人が結構いて、それが汗でびちゃびちゃ。見ていて暑苦しい、ということがかなり私の中で大きな原因となっていることがわかった。熱いのではなく、暑苦しく感じてしまう。そして濃い。この感じが以前からどうも苦手。そして何よりもの原因、一番の原因は、「痛そう」だからなのだ。
 ボクシングは割と平気で、昔から楽しんで観ることができる。うっかりチャンネルを合わせると、そのまま決着がつくまで観続けることもよくある。そういう意味では私にとってマラソン中継と同じくらいなのである。ボクシングだって痛そうだけど、プロレスは無理な体勢が多い。あとエンターテインメント性が高いから、あえて大げさな動きをして痛そうな顔をする。うわあとかうめき声がする。痛そうな音もする。ボクシングと違って顔だけじゃなく体から血も流れる。そりゃボクシングも痛そうだけど、ボクシングはグローブをしているし、殴る以外の攻撃をしてはいけないから、観ていてとてもわかりやすい。
 そう、他に理由を挙げるとしたら、「どっちが勝っているのか、誰が有利なのか、いまいちよくわからない」ということもある。ルールがよくわかっていないんだろうなあ。
 そのエンターテインメントが面白いのだと頭で理解はできても、やっぱり表情とうめき声と、色々な技で、「ああ痛そう」と、ついつい拒否反応。
 私はどうやら、その「痛そう」にとても弱いと気づいた。そして、息子も男子でありながら、その「痛そう」な感覚にとても弱い。男の子だからそんなこと鈍感なのではとか、そのくらい観るだけでしょ平気と思ったりエンターテインメント性を重視して楽しめるか、強がるか、どれかなのだろうと思っていたが、違うタイプの子もいるんですね。「痛そうで怖い」と、結構な拒否反応なのだ。遺伝かしら??
 そんなわけで、夫婦で色々と共通の話題があり、盛り上がれるのだが、どうにもプロレスだけは入り込めず、ごめんね、夫よ。
 でも、プロレスをしている人の素顔や人柄は見ていて楽しいし、彼らがバラエティで発言しているのも微笑ましく見ています。あとプロレス好きな人がそのことについて語る時は、好きなことだからイキイキしていて、見ていて面白いと感じています。
 毛嫌いしているのではなく、痛そうで見られない、ということを、プロレス好きな人にどうか理解していただきたい。