髪の毛の量が多い。尋常じゃない。髪の毛の量が多いエピソードには事欠かない。
 幼い頃から「髪の毛が多い」と、母にも言われていた。否定的な意味はまったくなかったと思うのだが、あまりの髪の毛の量の多さに、ボサボサになるのがみっともなくて、よく髪の毛をすいて、量を減らしていた。その作業がものすごく痛くて大嫌いだった。でもそうでもないとやってられないくらい量が多かったし、そうするものだと思い耐えていた。
 母の好みで小学生の間は髪の毛を短くしていた。当時はそれで何とも思わなかった。どういう髪型にしたいとかいう好みもなかった。中学生の半ばくらいになると、髪の毛を伸ばしたくなった。でも母や祖父母に「短い方が良い」と言われ、伸ばさせてもらえなかった。祖母に髪を切られるといつも泣くのをこらえるのがやっというくらいイヤだった。でも、伸ばす時に髪の毛がはねることも自分でいやだった。少しくらいなら伸びてきた時に、鏡の前で両側にくくって自分の様子を見てみたことが何度かある。校則で、肩より下に伸びると二つにくくらなくてはいけなかったからだ。でも、鏡に映った自分に絶句して、髪の毛は当分伸ばさないでおこうと決めた。大学生になったらくくらないで済むから、そうなったら好きにさせてもらおうと思い、高校生の間はかなりのショートカットにしていた。
 ショートカットだとラクで、髪の毛をかわかさなくても、そのまま寝ても風邪をひかない。勝手に乾くし。と思っていたが、翌日学校に行って髪の毛を友達に触られた時「朝洗ったん?」と聞かれ「いや、夜だよ」と言うとビックリされた。そう、一晩寝て、1時間半かけて登校しているのに、まだ髪の毛が乾ききっていなかったのだ。
 大学生になって、念願のロングヘアーにした。パーマもあてた。めちゃめちゃ嬉しかったし、大学生は時間があるので、ドライヤーに時間をかけてもそれほど苦にならなかった。とにかく念願だったし!二つにくくらなくてはいけない時も、自分に似合うくくり方を知り、それで通した。でも、二つにくくっているのに、それぞれの束が、普通の人の1つ分くらい太い。知り合いたちにそれをつかまれては、ひっくり返るくらいに驚かれた。そのために三つ編みもできなかった。ちょっとかわいい三つ編みに憧れた。でも、しめ縄が二つ、頭から生えているみたいだからみっともなくてやめた。量を減らしてもらっても、三つ編みはできなかった。髪の毛の量を減らすのは、髪の毛をすくことだから、短い髪の毛が三つ編みの途中からピョンピョン出てしまい、汚らしいのだ。三つ編みに憧れた。
 そんな私はポニーテールもできなかった。太くなり過ぎて、くくっても髪の毛の重みですぐに崩れてくるのだ。下の方で一つにまとめるのは、若い私にはどんくさく感じで、可愛いポニーテールとイメージが違う。ああ私はポニーテールにも憧れたものだった。高い位置で一つにくくれるなんて可愛いなあ。
 念願のロングヘアーにしても、結局できない髪型ばかりであった。可愛いピンでとめようとしても、びよ〜んとピン止めを跳ね返してしまうくらいの量である。可愛いピンもとめられない。
 美容室に行くと、間違いなく「多いね〜」と驚かれたが、あまりに毎回言われるとその美容師が嫌いになったくらいである。