さて、ちょっと良い気分しないと思いますが、苦手な店のパターンを、もういくつか挙げます。最後、そのパターンにハマらない店の話も出てくるので、しばしご辛抱を。
 頑固おやじ的な所は、とても苦手だ。店の雰囲気を左右する。客に媚びろとは言わないが、店員と客の間に自然に醸し出される雰囲気も大事なのだ。ちょっとした挨拶や注文のやり取りで、そこの店の雰囲気がわかり、次行くかどうかの参考になる。食べている間は喋るなとか、味についてとやかく言うなとか(まあこちらだって、美味しくなかったら店の中で何も言いませんが)、そんな萎縮した気分で食事をしたくない。食事は楽しく。どんな物でも。そう、ちょっとくらいまずくても。食べるって、生きること。幸せなことです。美味しい物を食べると、もっと幸せになる。そんなにいばりたいなら、そのエネルギーを違う場面、違う方法で発揮してほしい。
 店員の笑顔が少ない店も、いやですね。特に子供ができてからそう思う。こちらだって、外食もしたい。けど、子供を連れているのは遠慮めいた気持ちがある。子供にはなるべく静かにさせているが、それとはまったく別で、単に無表情で対応されると、聞きたいことも聞けない雰囲気になる。
 他に、混雑しているからと店員があたふたしている店。パニックなのが見てわかり、こちらまでイライラしてきて落ち着かない。長居してはいけないという気持ちは、店の様子を見てわかるが、店員が、「私の度量、いっぱいいっぱいです」っていうのを醸し出していると、ドキドキハラハラしてしまって、食べていることが申し訳なくなってきてしまう。
 さらに、いつも混雑していて、時間がかかってしまう店も敬遠してしまう。待てど暮らせどなかなか品物がやってこず、おしゃべりを楽しんで一段落して「あれっそういえば時間かかってるよね?」と、シンとした頃にやっと運ばれてくる。まあ仕込みを丁寧にやってるのかな。オーダー聞いてから作るんだよね、とか言い聞かせ、その時は我慢する。
 冬だからって寒い店もいやです。待ち時間が必要以上に長く感じてしまう。待っている間、お喋りして気を紛らわそうにも、寒さが気になって話がはずまない。
 さらには、店員の声が小さい店。「すみません、何て……おっしゃいました?」みたいに聞き返さなくてはいけないお店は、ホント、すごーーい面倒くさくなってしまう。適当に聞き流すと、何かとんでもない注文をしていないかと不安になって、何度も聞き返してしまう。自分の声の小ささを棚にあげて……。とにかく、困るのだ。
 しかし、ちょっと面白いくらい声の小さいレストランと出会ったことがある。ここは声が小さくても、今も時々通う。インドカレーのお店なのだ。インド人が作っていて、店員もほとんどがインド人である。だと思う。ちょっと細かい国籍まではわからないけど。で、注文を取る店員の声が、すごーーく小さい。息をのんで耳を澄ませていなきゃ聞こえないくらいだ。でも「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」は、普通のボリューム。
 こんな所に、何故行くことがあるのかと言えば、彼らの表情は、声の小ささをカバーできるほどではないのだが、まあ何となく態度が友好的で、別に嫌な気がしないのだ。そして、何より美味しいんです。