インド映画に対する印象と言えば、「大勢で踊る」。
 『踊るマハラジャ』が有名になり、私は観ていないのだが、それを観た友人たちは、一様に「笑えた」「面白かった」と言った。その時は特に観たいという気持ちが起こらず、その後のインド映画も「踊る」ことばかりを言われていたので、内容はどうなのかなと思ってしまって、観たことがなかった。
 今回初めて『きっとうまくいく』というインド映画を観た。
 最初に目にしたのは、新聞の映画紹介欄であった。記事を読んで、面白そうだから観たいなと思い、夫にその記事を読んでもらった。「面白そうだね。観てみたいね。」と夫も言っていたが、当時は時間がなくて観に行けなかった。子供も一緒に観ることができる年頃でもなかったし。
 段々、子供も映画に慣れてきて、ディズニー映画以外でも少しずつ観るようになっていった。実写版の最初は『テルマエ・ロマエ』だったかな。漫画が好きな一家(特に夫、そして息子も段々と)なので、息子もその予備知識は持っていて、映画を楽しんだ。それからちょこちょこと映画館で観たり、家でビデオを観たりしている。
 そして、ある日夫が『きっとうまくいく』を、おもむろに観始めた。突然だったのだが(笑)すぐに引き込まれた。突然歌いだしたり、皆で踊りだしたりして、インド映画はこういうシーンがどうしても外せないのだろうなあと文化を感じつつ、内容はなかなかの力作であった。
 インドでも厳しい大学に入り、そこでの学生や先生との関係、その10年後とをからめて話は進んでいく。話の後の方になればなるほど、爽快になっていき、本当の最後の最後で、観ている側が「そうまでもうまくいくものか」と驚きあきれつつ、映画の最後ってこれくらいが気持ち良いよなあと思うような展開である。
 インドの大学では、その窮屈で抑圧的な厳しさから自殺をする者が少なからずいるそうで、映画監督はそこを憂慮してこの問題を取り上げたと思われる。勉強とは何か、学ぶということは何か、教育とは何か、という本質をつきながら、その原点を主人公に語らせる。これは理想なのだろうが、でも子供を持つ親ならこのくらいを目指したいと思う。
 一人の主人公と言っても、その大親友である二人も主役だと言えるだろう。その二人は大学での成績が悪いのだが、その大学に入っている現実的な事情もある。それぞれに異なった内容ではあるが、家庭の事情であることは共通している。一人は貧しい家庭を救うための希望の星として、一人は親の将来への期待だけで、その大学に通い、何とか奮闘する。