そういう風に、若い女の子に甘い社会の構造が、私や若い女性たちを勘違いさせるので、そういった面で良くなかったと今では思うのだが、一方で怖いおじさん方もたくさんいた。気持ち悪いおじさんもたくさん見てきた。若い女の子たちを冷静に見ていたのもまたおじさんだった、という気がする。
 だから、恩恵にあずかりつつ、おじさんに対する警戒心がすごく強かった。実はおじさんに関しては「厳しい」というイメージの方が、当時は圧倒的だった。例えば自動車教習所で、先生たちが怖くて仕方なかった。例えばデパートでも、妙に親しくしてくるおじさん上司のすぐ下で働いていたおじさんは、意地悪だった。何かストレスを抱えているに違いない。と、当時のパートやバイト仲間で喋って自分たちの気持ちを発散していた。
 事務所で働いた時も、事務所内の多くのおじさんが私に手助けをしてくれた。かばってくれたり、食事に誘ってくれたり、常に気にかけてもらっていた。がしかし、そこの部長と課長は、とりわけ私に厳しかった。その職場内にいた上の地位の二人が、常に厳しい目で私をチェックしていた。
 こういう人たちの存在から、私は「やっぱりおじさんは怖い」というイメージがあった。
 彼らは「若いからって甘えるな」という態度を全面に出してきて、まだまだ甘っちょろい私はおおいにビビった。おばさんになった今、若い子たちに対して私は「甘えているなあ」「まだまだだなあ」とは思うが、まだ学生を卒業して何年の頃に、40超えた私と同じ次元で見てはかわいそうだとも思う。だって大人になったつもりだろうが、本当はまだまだ右も左もわからないのだから、丁寧に教えたいとも思うし、少しずつ自分でわかっていけば良いとも思う。しかし、怖いおじさんたちは威圧的だったり怒ったりする。
 もう少し細かく考えてみる。
 私が10代の頃は、10歳くらい年上の人ばかりを気に入っていた。気付くと27歳前後の人ばかりを「いい感じだな〜」と思っていた。10代の頃ですから、友達たちは、何でそんなおじさんばかりが良いのかと言っていたが、少しずつ年を重ね、20代に入っても、27歳くらいの人が何故か良かった。別に選んでいるわけでなく、「良いな」と思って年を知れば、大体その頃なのだ。このまま年を取って、27歳くらいの男性にしか魅力を感じなくなるのではと心配したくらいだ。
 そして私は、24歳の頃、年相応に、28歳の彼と知り合い、その後結婚した。別に年齢を聞いて「ヨシ!良い頃だ!!」とか思ったわけではない。偶然である。僕のどこが良いのかと聞かれ、その一つに「人間らしいところ」と答えた。私は人間味が出てしまう人や、人間の弱さが見える人にかわいげや魅力を感じる。その上で自分の世界を持っていて、地に足をつけている人が良い。だから私はイケメンだけでもてはやされている人が好きではない。彼らはイケメンだと言われるがために、周りの視線を意識し、その殻からなかなか抜け出られない。周りや自分のイメージの中で生きてしまっている。自分の一言一句、一挙一動に意識的になってしまう。女の人にはない無邪気さが、男の人の可愛いところなのに。まあイケメンじゃなくても、好感を持てない嫌な奴もたくさんいるけどさ。