ところで、阿部は何故、今回から阿部DONにしたのだろう。「ドン」は、夫が私を呼ぶ時の愛称である。「かすみドン」から始まった「ドン」のエピソードは、多くの人に笑われてきた。「阿部DON」だと、似てしまうから真似しないでよ!と勝手に思ったものだが、会場で、「阿部ど〜ん!」と呼ばれているのを聞くと、言いやすいのかもなあと思った。でも、川西だけ「川西さ〜ん」である。そんな風に呼ばれているのを聞くと、川西のファンだけが上品なのかと笑えた。奥田民生は、男子も女子も「たみお〜」であるが、私はそんな気安く「たみお」なんて呼べない。
 ……。
 いやいや絶対に呼べない。
 話がやっと落ち着いてきた。阿部も歌が上手だと思ったし、やはり奥田民生の上手さに心を動かされた。あれだけ力強い声がお腹から出ることが、本当にカッコいい。他の曲でも、少し声の調子が普段と違うと思ったのがあって、奥田民生はたくさんの色の声を持っている。全体に迫力があり、ユニコーンのロックに圧倒された。
 最後まで、ハンカチを片手に握りしめたまま、ハシャいだ。赤の袖のラグランシャツを着たガタイの良いおじさんである夫と、サーモンピンク色のニットを着たおばさんの私と、間にはさまれたリズム感の良い少年。誰かの目に留まっただろうか。まだまだツアー中。色々な地方で色々なお客さんを見て、いちいちどうこう思わないであろうが、見ている客側である私は、追っかけでもないし、その1回を、しっかり目に焼き付けました。22年後なんて言わないで、お互い生きているうちにまた来ていただきたい。
 帰りに改めて客層を見ると、半分以上はおじさんおばさんであった。私たち夫婦より年上なんだろうなという人たちもたくさんいた。皆、結構な普段着であった。生活感満載。
 そして、一緒に大声で歌っていたからなのか、私の声がかすれていた。喉で歌っていただけだし、演奏や歌声が大きくて、自分がどのくらいの声を出しているのかわからないんですね。そして、あれこれと家族で話しながら帰った。「立体的だったなあ〜」と、ちょっと的外れな感想も漏らしつつ。息子はとても疲れていたけど、車の中でアルバムを改めて聴きながら帰っていると「なんかCDだと音質っていうのかな、物足りない感じがするもんだね。」なんて、しみじみと言っていた。そして「楽しかったな〜」とも。夫婦のまき沿いにしたようだったけど、息子の感想を聞いて、連れて行って良かったと思えた。
 数日後、頼んでいた『SPICE BOYS』という、奥田民生のライヴDVDが家に届いた。ベース小原礼、キーボード斉藤有太、ドラム湊雅史といった、お馴染みのバンドメンバーである。すべて奥田民生作詞作曲の演奏は渋くて、コンサートの雰囲気も落ち着いていた。カッコいいなあ。これと比べると、ユニコーンのコンサートはハシャいでいた。でも楽しかったので、息子が「また行きたい」と言うのも納得である。次回はもう少し近づきたいような、でもやっぱり遠くの方が良い気がする。
 そうそう、最後に付け加えておきたい。
 面白かったのは、EBIちゃんの歌が少々上達していたことである。