この前、車の中から、男の人に声をかけられた。
 20歳前後は、その年齢のせいもあり、住んでいた地域が大都会だったこともあり、時には街で声をかけられることがあった。ナンパは嫌いで、チャラチャラした男の子が、声かけてくると、もうプライドが……!そんな男に引っかかると思われるような女に見えますか?というのと、そもそも街で声をかけてくるような男の子は嫌い、というのとで、中には、精一杯勇気を出している子もいるかもしれないのに、こちらは猛烈な嫌悪感でした。
 頻繁で困るわあ、ってほどは全然なかったけど、そんなことが時にはあり、チラシやティッシュにしても、もれなく配られたものだった。大学生の頃は、周りに大学も多かったので、車の中から声をかけられることも時にはあった。もちろん無視。明らかに聞こえていても聞こえないフリ。怖いし。
 「道がわからない」なら、昔から年配の方によく声をかけられた。これはもしかしたらナンパより多かったのではと思うくらい、気軽に声をかけられた。関西だから??私がボンヤリ、声をかけられそうな気の良さそうな若者に見えたから?特に嫌な気はしないので、そういう時は立ち止まって説明したものだった。病院でもそうですね、年配の方に話しかけられることがあります。特に子供を連れているとね。
 若い頃の私は、見ず知らずの人に、病院で声かけられても、戸惑うばかり。えっあなたと知り合いじゃありませんけど。って感じで、どうしたら良いのか、相当素っ気ない返事をしていた。このまま話が盛り上がったらどうしよう、とか、そんなものを恐れて(?)返事は極力短く。でも、きちんと返事をしていても、素っ気なく返事をしていても、相手は話すことがなくなったら、別に尾を引くものでないとわかってからは、それなりに返答することにした。時には相手が止まらなくなることがあるのだが、それでもキリがやってきて、いつかは終わる。そして、受付の人やお医者さんに呼ばれたりすると、話は途切れ、それじゃあまた、って感じでドライなのである。その後院内でばったり会っても「ああ」くらいの会釈で、親しげになることもない。話が終わってからも、ただ正面を向いて、ボンヤリ待つだけだし。気軽なものなんだ。と気付いてから、年配の人との挨拶も平気になった。
 ……そんな私が、道端で声をかけられた。
 この辺りは都会でもないし、年齢も年齢だし、長らく声なんてかけられていない。
 道を横切ろうとして後ろに車が来ていないか確認すると、来ていたので、横切るのをやめて、道路の端に寄った。すると、男の人の声で、「すみません」と。あまりに久しぶりのことで、びっくりしたが、その辺りにある治療院を探しているとのことだった。声をかけてきたのは同じくらいの年頃の男の人、まあ結局おじさんだったんだけど、私は本当にびっくりしたのだ。
 なんなら、コントみたいに、肩が、あからさまにビクッと動いた。
 今後、車から声をかけられるなんてことがあるんでしょうかね。「このおばあさんに聞いても頼りないよな」って、パスされていくんでしょうか。ちなみに、今回、私はその治療院の場所を詳しく知らなくて、よくわからなかった。もう既に頼りない。