「手続き」って、ただでさえ面倒なもの。なのに、私ときたら、読んでもよく意味がわからない。頭に入ってこない。難しい単語が並んでいたりして、私って国語力ないんだっけ、と思うくらい、その文章の意味がよくわからない。そんな文がまた山のようにある。延々と続く。あーもー読む気がしなーい!!意味がわからなーい!!と投げ出したい気持ちを抑えて、ザッと目を通す。多分、言葉を知らないだけなんだろうけど。
 夫も面倒くさいだろうに、目を通す。私よりは理解しているので、頼れる、ありがたい。
 そして、それと並行して、銀行通い。
 ローンを組まなければいけない。
 双方の親に助けてもらいながら、ローンの手続きをしていく。
 ああ、皆さんありがとう。
 でも、やっぱり難しくて意味がわからない。
 結婚16年を迎えようとする頃に、夫に「‘わかってないな’と思う表情が、わかるようになった。」と言われた。半ば放心したような、あいまいな微笑みを浮かべるそうだ。そして、わからないことは積極的に質問する私が、黙ってうなずいているそうだ。そうか。わかりやすいな、私。いや、うなずいていたらダメじゃないか、わかっていないんじゃないか、私。
 そこは、隣にいる夫を信頼して……。ごめん、オット。銀行のお金関係の話は、100%、アナタに頼りました。訳がわからなくて。最初はシステムすらわかっていなくて。ローンのね。呆れるほど、こういう数字とか手続きとか聞き慣れない言葉を知ることに対して、消極的なのだ。頭がまったく働かなくなる。本当に、訳が分からなくなるのだ。
 帰宅して、何日か後に「ねえねえ、これってどういう意味?」と、遠慮がちに聞くのが精いっぱいだ。だって、申し訳なくて。でも知りたくて。
 夫も呆れながら教えてくれた。
 それでも、やっと半分くらい理解した感じ。似たような質問も何度か繰り返したことだろう。
 それが、1週間に1回くらいあるのだから、私にも相当ストレスとなった。全部、話を理解して、責任もって印鑑を押していかなければいけない夫も、仕事じゃないのに、時間をやりくりして銀行に来てくれて、ストレスだったことだろう。
 その合間に、建築屋さんはやってきたり、こちらから行ったり、間取り図のことや、地鎮祭のことなど、話し合った。
 間取り図に関しては、実は、私はだいぶ思い描いていた。
 結婚する前から、家やマンションの間取り図を見るのが好きで、そういうチラシを見ていると、なんでだろう、リラックスするのだ。あれやこれや夢を描いて楽しいのかな。そのうち、アパートを出たいと思ってから、家を建てるのならと、段々現実的に自分で思い描くようになり、まだ、土地も探そうとしていない頃から、趣味の一つとして、『3D マイホームデザイナー』というパソコンソフトまで買ってしまい、思い通りの間取りを考えては、その図を作り、楽しんでいた。