有名ミュージシャンのコンサートやライヴ、生まれてこの方、行ったことがなかった。
 母がヴァイオリン奏者なので、オーケストラを聴きに行ったことはある。兄も小学生の頃ヴァイオリンを弾いていたので、その楽団のを聴きに行ったとか、あとは、母のヴァイオリンの生徒さんたち、中学の頃の友達のヴァイオリン、息子のドラム、といった、とても「身内」感が高いコンサート。学校から何かを観たり聴いたりってことはあったけど、有名人のライヴとかそういうのは行ったことがない。学生時代は、帰宅時間も遅くなるからダメ、と親に言われていたし。
 結婚してから、一度だけ、奥田民生のコンサートに行けそうなタイミングがあって、チケットを取ったことがあった。でも、夫の仕事が入ってしまい、他の人に譲った。あー行きたかったー!!って思いながら、そのうち子供ができた。子供ができると、気分的に、預けてまで行く気がしなくて、ひたすら我慢した。DVD観て、羨ましいなーと思うのと、大好きでも、こんなノリにはついていけなさそーっていう思い。そう言えば、さまぁ〜ず大竹も「オレは、静かに聴きたい。ノリノリの曲を静かに聴いちゃいけないのかよ。なんで、静かに聴いていると、後ろめたい気持ちにならなくちゃいけないんだよ。」といった内容のことを言っていたことがあった。まったく同感である。
 ちなみに、昨年、落語を聴きに行く機会があった。息子が生で聴いてみたいと言うので、隣の市まで、柳家花緑春風亭一之輔の寄席を聴きに行った。席はかなり良く、中ホールで、端っこだったものの前の方。落語家さんたちとバッチリ何度も目が合った。上手な落語家さんは、ちゃんと一人一人の目を見て喋る気がする、と母から聞いたことがあるのだが、まさにその通り。息子も爆笑して大ウケしていて、そういうのも見てもらえて良かったと思う。きっと、多くの人と目を合わせているので、よほど好みのタイプとか特徴的な人でもない限り、目が合ったからと言って、目には留まらないものだろうが、小学生はその会場に一人だったようで、多分息子のことは気が付いていただけたのではないかと思う。
 今住んでいる田舎には、人口が少ないし、自分の好きなミュージシャンがそこまで歌いに来るということは期待できない。隣の県ならあるのだが、夜遅くなり、子供がいるのなら、一泊でもしないと帰って来られないような時間。それに、以前も書いたことがあるが「僕はまだ背が低いから見えないと思う」という息子の冷静な判断。今もまだ、大人の中に入ると小さいから、見えないかもしれないので、前で総立ち、熱気ムンムンの中、立たせることは可哀相なので、チケット取るなら、あえて後ろ。疲れたら座ったら良いし。
 とは言え、近くで観たい気がするのもまた本音なのだが、夢の中でさえ、話しかけられない私は、とにかくそこら辺が、意識過剰なもので。不必要なほどの恥ずかしがり屋さんである。落語の時のように、うっかり目が合った瞬間、爆笑しているならまだしも、ふわ〜んと嬉しそうな顔をして見ている自分をどうしたら良いかわからないので、決して目が合わない、合っているのかどうかもまったくわからないくらい後ろの方が良い。でも。ジョロ席って何スか。4階って、もしかして豆粒クラス……っスか。そもそも4階があったんスか。そこまで後ろだったとは。