奥田民生の新しいアルバムで、色々と書いているし、カッコ良いなと思う曲が多かったのだが、私は『ぼくら』と『風は西から』が1番好き。
 『風はどこから』が、『風は西から』の直前のタイトルに使われているのも笑えるのだけど、本当は『風はどこから』もすごくカッコ良いと思っています。でも『風は西から』の方が、楽しくて好きです。これも、車の会社のCMで使われていますよね。あの部分は、すごく奥田民生らしいギリギリの和音が良い感じなのですが、特に好きなのは、CMで使われている部分に入る前までと、その後の「輝き放題」の辺りです。
 この曲の最初は、ギターだけをバックに奥田民生の声が聞こえてきて、次にパーカッションが入ってにぎやかになる。タンバリンやマラカスの音が響くと、彼のリズム感の良さが素晴らしく、又、楽しくタンバリンを振っている奥田民生(途中からしんどそうになるのをこらえているのもまた良いのですが)が想像できて、顔がほころんでしまう。声の余韻も良いし、バックの演奏と声のバランスがとても良くて、大好きな曲だ。とにかく気持ち良く聴ける曲だと思う。
 『ぼくら』は、ちょっとゆったりめの曲です。メロディは、結構難しく、歌おうと思うと、上がったり下がったり中途半端に上がったり、盛り上がりそうで盛り上がらなかったり、その辺を奥田民生は何でもないように歌っちゃうんだなあと思う。曲調自体は、それほど好みではない。でも、歌詞が良い。最初に良いなと思ったのは「だからあ この手を〜」の後である。一般的な曲ならきっと「離さないで〜」みたいになるのであろうところを「ゆるめ〜てないさ〜」と続くのである。ゆるめる、という言葉の選択と、それならば「ゆるめないで」と言いたくなる(?)のを、「ゆるめてないよ」という主体的な気持ち。こんなに言葉を分析する必要がなくても、好きなもんですから、色々と深読みしたくなるんです。奥田民生は、とにかく男っぽいのだ。歌詞がいつも男っぽい。どう聞いても、いつだって男目線であることがあからさまである。そこが大好きなのだ。恋愛で、迷ったり不安になったり女々しくなっちゃったりしない。そりゃ人間ですからそうなることもあるのかもしれないけど、歌詞にはそれが出てこない。これがカッコ良い。
 あと、この曲の中で、もう一か所。歌詞とサビの部分の相性がたまらない。「ああわからないぜ」っていうところ。ほんの一瞬、音が消え、「ああわからないぜ」って続くんです。その後も、もちろん歌詞が続いてその後に続く言葉に対しての「わからない」なんですが、50にもなろうとするおじさんが「わからないぜ」って言うんですよ。「ああ」って言った後で(しつこい)。
 「ああわからないぜ」。
 もうそれだけでキュンキュンなのだ。歌詞の、メロディへの乗せ方や音の使い方、声の張り方、歌のうまさにヤラレちゃうのです。
 あー奥田民生のライブに行ってみたーい!けど、息子はユニコーンの川西のドラムに憧れているので、先にそっちかなー。どちらにしても、私は前の方には行けません。目がうっかり合うと、恥ずかしいので。むふふ。ああ、気持ち悪いから、やめなくちゃ。「むふふ」。