ずっと好きではなかったコンビがある。
 天竺鼠である。
 川原が、笑いのためなのか、周りを小馬鹿にしたような態度を取ってみたり、言ってみたりすると、まともに話せない感じが私にはつまらないのだ。又、瀬下の、余裕のない表情も、見ていて痛々しかった。しかも、エピソードを読んだり聞いたりしていると、どうやら、二人とも、学生時代、相当悪かったようで。結婚してからも良い評判もないようで。どんなに下品なことを言っても、照れや育ちの良さ、誠実さが垣間見えるような芸人さんが好きなので、二人のことは毛嫌いしていたのが正直なところ。
 ところが、昨年末の漫才を見て、あまりの予想のつかない展開に笑い、さらには、それに対してただ怒鳴ったり、セリフをこなしたり、と、一本調子になりそうな相方の立場を、上手に演技して、間をきちんと持たせて、初めて対応するかのように接している(アドリブも多そうだけど)瀬下の対応に「あれっ、この人、こんなに上手だったっけ」と驚いた。
 そして、前後、色々なコンビに、かなり笑わされてもらったのに、一通り終わった後、耳に残ったフレーズ「さむい〜〜」に対して、「えっ、寒いの?」と聞くと「季節〜〜」というセリフ。これがどうにも頭から離れなくなってしまった。息子と、「眠い〜」とか(ネムーイ!っていうギャグもありましたね)何かしら形容詞が口から出る度に「きせつ〜」と続けるようになってしまった。
 あんなに嫌いなのに、どうしよう!こんなに頭の中を渦巻いて!!
 そして、その後の「ABCお笑いグランプリ」で、爆笑しっぱなし。そのコントでは、「あれ?もしかして」とかそういった間もなく、勢いでどんどん笑わせられた。一般的に、間があって、余裕があり、演技力がある方が、私は笑える。でも、今回のネタは、スピード感が良い方に出たのかな、本当に可笑しかった。そんなわけで、天竺鼠を「面白い」と思ってしまう自分の気持ちを、認めないわけにいかなくなった。
 川原のぶっとんだ世界観もどうなんだかと思ってしまうが、それ以上に、本当に悪かったらしい瀬下の、舞台上でのフォローぷりがうまいと思うのだ。そして、川原のやりたい放題の行動に対して、きっとずっと頭を下げ続けてきたのだろうと思わせられる瀬下の表情や態度で、「すごく悪かった」行いを、償っているように見えるなあ、と思わせられてしまった。ま、実際のところは知らないけど。
 そして、二人が1位だとわかった時に、「色々と失礼な態度をすみませんでした」と言い、嬉しさ爆発したい表情をグッとこらえながら、でも嬉しさを隠せないといった、奥の表情を見て、やっと二人の、お笑いに対する真の姿を垣間見た気がした。
 ちなみに、若手??では、磁石、囲碁将棋、和牛、日本エレキテル連合にも注目。私にとっては笑えちゃう。和牛の漫才は、まだ二つしか観ていないが、下らなくて、大笑いしました。日本エレキテル連合は、個人的に右側のおじいさん役が大ウケです。若手が次々と出てきて、お笑い業界も、ベテランの層の厚さなど大変なのだろうけど、観客側としては、色々と観ることができるのは楽しいですね。